親が存命中だが、認知症など、今後の不安があるので、争いにならないよう事前に相続人達で分けてしまいたいという相談を受けることがあります。
相続はあくまで被相続人が亡くなった後のことですが、生前に分割してしまえば確かに争いは少なくなるかもしれません。このようなことは可能なのでしょうか。
今回は親の資産を生前に分けることができるのかについてお話ししたいと思います。
将来の遺産であってもあくまで親の物
まず、原則論として、法律上、資産はその所有者の物です。
将来的に遺産として扱われるものであっても、所有者が存命している以上、遺産と扱うことはできません。
相続や遺産分割は、あくまで被相続人死亡後の話であって、生きている以上は、あくまで親の物は親の物です。
したがって、親の資産を、親が存命している段階で、法定相続人で勝手に分けることは不可能です。
相続の準備はどうすれば良いか
では、相続の準備をしておきたい場合はどうすれば良いでしょうか。
まず、生前贈与という方法があります。
これは、親自身が子などに生きている間に資産をあげてしまう方法のことです。
財産は所有者が自由に処分できますので、親が自分で贈与してしまうことは可能です。
次に、遺言という方法があります。
これは、親自身が、自分が亡くなった際に遺産をどうしてほしいと決めておく方法です。
遺言は形式が法定されていますので、しっかり作成する必要がありますが、生前は親自身で財産を利用し、死後に相続するという点で、親としても採用しやすい方法です。
また、家族信託という方法もあります。
これは、生前に、親自身がその資産を他人に渡すが、自分のために利用してほしいなど、一定の契約をしておくことです。
こちらも要式をしっかり守っている必要があります。
認知症などの場合は
上記各方法はいずれも親自身が判断能力があり、しっかりとした判断のもとで行う必要があります。
他方、認知症など、判断能力がない場合にはそのような手段はとれません。
遺言に関しては、医師の立ち会いなどにより、認知能力が復帰している際に可能な場合もありますが、現実的にはなかなか難しいと思います。