自筆証書遺言とは
自筆証書遺言は、遺言者が単独で作成する遺言の方式です。遺言者がその全文、日付、氏名を自書し、押印することで成立します。日本で最も利用されている遺言方式の一つとされています。
自筆証書遺言の要件
自筆証書遺言が法的に有効と認められるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 遺言の全文を自書すること
- 日付を自書すること
- 氏名を自書すること
- 押印すること
「自書」の意味
「自書」とは、遺言者自身が手で書くことを意味します。遺言が遺言者の真意に基づくことを保障するため、この要件は厳格に解釈されます(代筆はできません)。
認められない方法
パソコンやワープロ、タイプライター、点字器など機械を用いて作成された遺言書や、他人が代筆したもの、ビデオや録音テープによる遺言は「自書」と認められず無効となります。
認められる方法
カーボン紙を用いた複写による記述は「自書」として有効です。
添え手による補助
病気等により他人の添え手による補助を受けて書かれた場合でも、遺言者に自書能力があり、補助者の意思が介入した形跡がないと判断できる場合に限り、「自書」の要件を満たすとされます。
日付と押印の重要性
日付
日付は、遺言作成時に遺言能力があったか、複数の遺言書が存在する場合の優劣を判断するために必須です。
押印
押印は遺言者の同一性と真意を確保する目的で求められます。判例では指印も有効とされていますが、自筆の花押による代用は認められていません。
財産目録の方式緩和
自筆証書遺言の方式緩和により、遺言書に添付する財産目録については全文を自書する必要はなくなりました。
パソコンで作成した目録や、預金通帳のコピー、不動産の登記事項証明書などを添付することも可能です。
ただし、自書しない財産目録の全てのページに遺言者が署名・押印する必要があります。
作成にあたっての注意点
利点
- 証人が不要で、いつでもどこでも簡単に作成できる
- 費用がかからない
- 遺言の存在自体を秘密にできる
欠点
- 要件不備で無効になる可能性がある
- 紛失、破棄、隠匿、改ざんの危険がある
- 相続人間で紛争が生じやすい
したがって、欠点に配慮して慎重に作成する必要があります。
法務局における遺言書保管制度の活用
自筆証書遺言の欠点を補うため、「法務局における遺言書保管制度」が創設されました。
- 法務局が原本を保管するため紛失や偽造の恐れがない
- 方式の外形的確認が行われ、無効リスクが減る
- 家庭裁判所の検認が不要になる
検認手続
法務局の保管制度を利用しない自筆証書遺言は、遺言者の死後、家庭裁判所で「検認」を受ける必要があります。
検認は遺言書の偽造・変造を防止するための証拠保全手続であり、遺言の有効・無効を判断するものではありません。
加除・変更の方式
遺言書の内容を後から変更する場合には、厳格な方式が定められています。
- 変更箇所を指示する
- 変更した旨を付記して署名する
- 変更箇所に押印する
これらを満たさなければ変更は効力を生じません。ただし、明らかな誤記の訂正については例外とされた判例もあります。