支払いの約束があるにもかかわらず相手が応じない、あるいは正当な請求をしているのに支払いを受けられない……。こうした「債権回収」の問題は、非常に解決が難しいテーマです。
たとえ裁判で完全勝訴したとしても、国が代わりに支払ってくれるわけではありません。今回は、相手方が支払わない場合の一般的な手法と、その限界についてお話しします。
債権回収の3つのステップ
一般的には、以下の3つの方法を検討することになります。
① 話し合い(任意交渉)
相手に「支払う意思はあるが、今はお金がない」といった事情がある場合、分割払いの提示などの譲歩案を出すことで、現実的な解決を目指します。感情的な対立が少ない場合に有効です。
② 調停・ADR(第三者を交えた話し合い)
当事者同士では感情的になり話が進まない場合、裁判所などの第三者に間に入ってもらう方法です。調停で合意が成立すれば、裁判の判決と同じ効力(差し押さえができる権利)を持つ「調停調書」が作成されます。
③ 裁判(訴訟)
話し合いが不可能な場合の最終手段です。証拠に基づいて裁判所が強制的に結論を出します。最大のメリットは強制力ですが、証拠が必要な点や弁護士費用の負担などのデメリットもあります。
強制執行の壁:相手に資産がない場合
裁判で勝訴したり調停で合意したりしても、相手が支払わない場合は「強制執行(差し押さえ)」の手続きが必要です。
しかし、強制執行は万能ではありません。
- 資産の特定が必要:相手のどの銀行口座や不動産を差し押さえるか、こちらで特定しなければなりません。
- 「ない袖は振れない」:法改正により預貯金等の調査はしやすくなりましたが、そもそも相手に資産や安定した収入がなければ、差し押さえること自体ができません。
確実な回収に向けた事前の備えと「譲歩」の重要性
本来であれば、契約時に保証人や担保を設定しておくのが理想的です。しかし、回収不能になってからこれらを求めるのは現実的ではありません。
もし相手に資産がないことが明らかならば、「将来的な回収を見越した譲歩」も一つの戦略です。
「一括は無理でも、月々この金額なら払える」というラインで合意し、それを確実に書面(できれば公正証書)に残しておくことで、長期的な回収を図る道も検討すべきでしょう。
感情的には「一歩も譲りたくない」と思うのは当然ですが、最終的な目的は「1円でも多く回収すること」です。ご自身の状況において、どの手法が最も回収可能性を高められるか、まずは弁護士と一緒に整理してみませんか?