借用書や示談書など、お金のやり取りに関する書面を作る際、どのような言い回しが適切なのか迷うことは多いはずです。法的な文書には、特有の「定型文(フレーズ)」があり、それぞれに重要な意味が込められています。
今回は、金銭の支払いを約束する際に必ず押さえておきたい基本の文面について解説します。
1. 一括払いを約束する基本フレーズ
最も標準的な支払いの条項は以下のようになります。
「甲は乙に対し、〇〇(原因)として、金〇円の支払義務があることを認め、同金員を令和〇年〇月〇日限り、乙指定の銀行口座に振り込んで支払う。なお、振込手数料は甲の負担とする。」
- 「〇〇として」:損害賠償金、解決金、貸付金など、支払いの名目を特定します。
- 「支払い義務を認め」:債務の存在を確定させる重要な一文です。
- 「〇月〇日限り」:法律用語で「までに」という意味です。期限の最終日を指します。
2. 分割払いを定める場合のポイント
分割払いの場合は、期間と毎月の金額を明記します。しかし、単に分割を認めるだけでは、相手が支払いを止めてしまった際のリスクが残ります。
滞納を防ぐ「期限の利益喪失条項」
「期限の利益」とは、期限が来るまで支払いを待ってもらえる権利のことです。これを失わせる条項(期限の利益喪失条項)を入れておくことで、滞納時に残金を一括請求できるようになります。
「甲が支払いを怠り、その額が〇回分(あるいは〇円)に達したときは、当然に期限の利益を失い、甲は乙に対し、残金を直ちに一括して支払う。また、完済まで年〇%の遅延損害金を付加する。」[Image: A document showing a breakdown of monthly payment schedules and an “Acceleration Clause” (期限の利益喪失)]
3. 完済を促す「免除条項」の活用
あえて本来の債務額を高く設定しておき、真面目に支払えば残りを免除する、という「アメとムチ」の形をとることもあります。
「甲が遅滞なく分割金を完済したときは、乙は甲に対し、残る〇円の支払い義務を免除する。」
これにより、相手方に「期日通りに払いきった方が得だ」という心理的インセンティブを与え、回収率を高める効果が期待できます。
[Image: Conceptual diagram of a settlement: High total debt amount vs. reduced amount if paid on time]これらの文面はインターネットでも手に入りますが、文言一つで「一括請求できるかどうか」が変わってしまうため、非常に慎重な扱いが必要です。特に多額の金銭が絡む場合は、将来のトラブルを未然に防ぐためにも、弁護士による文面の監修や、強制執行が可能な「公正証書」の作成を検討してください。