相手の預貯金や不動産が特定できない、あるいはそれだけでは足りない場合、次に検討すべきは「家の中の物品」や「毎月の給与」の差し押さえです。それぞれの実行方法と、最近の法改正によって強化された「財産を見つけるための新制度」について解説します。
1. 動産執行:家の中にある現金や貴金属を回収する
動産執行とは、裁判所の「執行官」が相手の自宅や事務所に直接赴き、価値のある物品を差し押さえて現金化する手続きです。
- 対象となるもの:家の中にある現金(タンス預金)や、宝石、時計、骨董品、高価な電化製品などが対象です。
- 差し押さえできないもの:衣服、寝具、調理器具、冷蔵庫といった「生活に不可欠な家財道具」は、法律によって差し押さえが禁じられています。また、リース品など他人から借りているものも対象外です。
- 実効性のポイント:現代の一般的な家庭では、生活必需品以外に高値で売れる物品が少ないことも多いですが、「裁判所の職員が家に来る」という心理的なプレッシャーから、相手が支払いに応じるケースも少なくありません。
2. 給与差し押さえ:勤務先から直接回収する
相手が会社員などの場合、最も確実かつ継続的に回収できるのが「給与」の差し押さえです。裁判所から勤務先の会社(第三債務者)に通知が送られ、会社から直接あなたへ支払われる仕組みです。
- 差し押さえられる範囲:原則として給与額(手取り)の4分の1までです。ただし、請求する内容が養育費や婚姻費用である場合は、特例として2分の1まで差し押さえることができます。
- 勤務先の特定が必須:「どの会社に勤めているか」がわかっていないと申し立てができません。一度差し押さえれば、相手が退職しない限り、完済まで毎月自動的に回収が続く非常に強力な手段です。
3. 相手の財産や勤務先が「全くわからない」時は?
「どこで働いているか知らない」「どこの銀行を使っているかわからない」という場合、これまでは泣き寝入りするしかありませんでした。しかし、近年の法改正により、以下の強力なサポート制度が整いました。
| 制度名 | 内容とメリット |
|---|---|
| 財産開示手続 | 裁判所が相手を呼び出し、財産目録を提出させる。嘘をついたり拒否したりすると刑事罰(懲役や罰金)の対象になるため、実効性が向上しました。 |
| 第三者情報開示 | 裁判所を通じて、金融機関や役所などに「口座の有無」や「勤務先情報」を照会できる新しい制度です。 |
「差し押さえるものがなさそうだから」と諦める前に、これらの手続きを組み合わせることで道が開けるかもしれません。特に給与の差し押さえは、相手の社会的信用にも関わるため、早期解決への強力なカードになります。
次回は、この「財産開示」や「第三者情報開示」の具体的な仕組みと、法改正でどのように使いやすくなったのかを詳しく解説します。