不貞行為(不倫)など、自ら離婚の原因を作ってしまった側(有責配偶者)からの離婚請求は、日本の法律実務において非常に厳しいハードルが設けられています。「勝手な理屈で相手を追い出すことは許されない」という信義則の考え方があるためです。有責配偶者が離婚を認めてもらうための「3つの高い壁」を解説します。
1. 裁判で認められるための「3要件」
最高裁判所の判決により、有責配偶者からの離婚請求が認められるためには、以下の3つの条件をすべて満たさなければならないとされています。
① 相当長期間の別居
「長期」が具体的に何年を指すかは、夫婦の年齢や同居期間によって異なります。数年では足りないケースが多く、10年以上の別居を経てようやく認められることも珍しくありません。夫婦関係が完全に形骸化していることが求められます。
② 未成熟子がいないこと
「未成熟子」とは、単に成人のことではなく、経済的に自立していない子供を指します。大学生などで学費が必要な子供がいる場合、この要件を満たさない(離婚が認められない)可能性が高まります。
③ 相手方が過酷な状況に陥らないこと
離婚によって、捨てられる側の配偶者が経済的・社会的・精神的に極めて過酷な状況(生活困窮など)に置かれないことが条件です。これを防ぐため、後述する「誠実な対応」が不可欠になります。
[Image: A steep mountain path with three checkpoints labeled “Long-term Separation,” “No Dependent Children,” and “Economic Protection for Spouse.”]2. 「誠実さ」を具体的な条件で見せる
裁判までいかずに協議や調停で離婚を目指す場合でも、有責側である以上、相手方の納得を得るための「厚遇」が必要になります。
- 経済的給付:相場以上の慰謝料、多めの財産分与、あるいは離婚後の一定期間の生活費(扶養的財産分与)などを提示し、相手の将来の不安を払拭する必要があります。
- 精神的な誠実さ:これまでの行為を謝罪し、誠意を持って話し合いに臨む姿勢が問われます。高圧的な態度は解決を遠ざけるだけです。
3. 裁判以外の道:協議と調停
上記の厳しい「3要件」は、あくまで裁判官が離婚を強制的に認める際の基準です。
| 解決方法 | 離婚の可能性 |
|---|---|
| 協議・調停 | 相手が合意すれば、3要件を満たしていなくても離婚可能。 |
| 裁判(訴訟) | 3要件を厳格にクリアしない限り、原則として棄却される。 |
有責配偶者からの離婚請求は、通常の離婚に比べて時間も費用もかかる傾向にあります。相手に「離婚に応じても損をしない、むしろ再出発の助けになる」と思ってもらえるような条件提示ができるかが鍵となります。ご自身の状況でどの程度の別居期間や条件が必要か、まずは専門家と一緒に戦略を立てることをお勧めします。