配偶者が突然家を出て帰ってこなくなったり、十分な収入があるはずなのに生活費を渡してくれなかったりする状況は、残された側にとって精神的にも経済的にも非常に過酷なものです。こうした行為は、法律上の離婚原因である「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。
1. 離婚原因となる「悪意の遺棄」とは?
民法では、夫婦には「同居・協力・扶助」の義務があると定められています。これを正当な理由なく無視することを「悪意の遺棄」と呼び、裁判で離婚が認められる原因の一つとなります(民法770条1項2号)。
- 悪意の遺棄にあたる例:「愛人のもとへ行ったきり戻らない」「健康で収入があるのに、専業主婦(主夫)の配偶者に一切生活費を渡さない」「一方的に実家に帰り、話し合いを拒否し続ける」など。
- あたらない例:DVやモラハラから逃れるための避難、単身赴任、病気療養のための実家帰省など、正当な理由がある別居。
2. 生活費が途絶えたら「婚姻費用」の請求を
離婚の話し合いには時間がかかりますが、日々の生活費は待ってくれません。別居中であっても、離婚が成立するまでは「自分と同程度の生活を配偶者にも送らせる義務」が継続します。これを婚姻費用といいます。
- 請求の方法:話し合いで解決しない場合は、速やかに家庭裁判所へ「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てましょう。
- 強制力の確保:調停が成立するか、あるいは審判(裁判官による決定)が出れば、万が一支払いが滞った際に、相手の給与や預貯金を差し押さえることが可能になります。
3. 慰謝料の請求も視野に
悪意の遺棄が認められる場合、相手方は「婚姻関係を破綻させた責任」を負うことになります。そのため、離婚に伴う精神的苦痛に対する対価として、慰謝料の請求も検討できます。
| 状況 | 法的な判断のポイント |
|---|---|
| 一方的な別居 | 正当な理由の有無と、同居義務違反の度合い。 |
| 生活費の不払い | 扶助義務違反。婚姻費用分担請求が最も効果的。 |
| 長期間の別居 | 「悪意」がなくても、関係が修復不能(破綻)なら離婚原因になり得る。 |
生活費を入れない配偶者との離婚を考える際、一番の不安は「これからの生活」だと思います。まずは相手に対して法的に生活費を確保する「婚姻費用」の手続きを最優先で行い、経済的な基盤を固めた上で、じっくりと離婚の条件(慰謝料や財産分与など)を交渉していくのが賢明な戦略です。