配偶者の不貞行為(不倫)は、民法でも明確に定められた強力な離婚原因です。しかし、いざ離婚の手続きを進めるとなると、感情的な問題だけでなく「証拠の有無」や「不倫以前の夫婦仲」など、法的にシビアなハードルがいくつも存在します。
1. 法律が認める「不貞行為」とは
民法770条1項1号には、離婚原因として「配偶者に不貞な行為があったとき」と明記されています。不貞を「した側」から離婚を拒むことは非常に困難であり、最終的には裁判で離婚が認められる可能性が極めて高いといえます。
2. 証拠の壁:何があれば「不貞」と認められるか?
相手が不倫を認めていればスムーズですが、否定された場合はこちらで立証しなければなりません。法的に「不貞」と認められるには、原則として「自由な意思に基づく性交渉」があったことを示す証拠が必要です。
- 有力な証拠:ラブホテルに出入りする写真や動画(滞在時間がわかるもの)、性行為があったことを直接示すデータなど。
- 不十分になりやすい証拠:親しげに歩いている写真、仲の良いメールやLINE、食事のレシートなど。これらだけでは「肉体関係」まで証明できないと判断されるケースがあります。
※肉体関係の証明が難しくても、あまりに親密すぎて夫婦関係を壊したと判断されれば、「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められることもあります。
3. 「破綻後の不倫」は責任を問われない?
不倫が始まるよりもずっと前から、別居していたり夫婦関係が完全に冷え切って「破綻」していたりした場合は、その後の不倫が離婚原因や慰謝料の対象にならないことがあります。
- 破綻とみなされる例:長期間の別居、離婚を前提とした具体的な協議が進んでいるなど。
- 破綻とみなされない例:単なる喧嘩中、家庭内別居状態、口頭で「離婚したい」と言い合っている程度。この場合は、依然として「不貞行為」としての責任を追及できます。
4. 不倫相手への慰謝料請求
不倫は配偶者と相手方の二人が共同で行う不法行為であるため、不倫相手に対しても慰謝料を請求できます。
| 請求のポイント | 注意点 |
|---|---|
| 請求金額の変動 | 不倫が原因で別居や離婚に至った場合、そうでない場合よりも慰謝料額は高くなる傾向があります。 |
| 請求できないケース | 相手が「既婚者だとは知らなかった(かつ知らなかったことに落ち度がない)」場合や、既に夫婦関係が破綻していたと信じていた場合など。 |
| 相手の特定 | 氏名や住所がわからないと、現実的に請求を進めることが難しくなります。 |
不貞行為を理由とする離婚は、有利な条件(慰謝料など)を引き出すためにも、感情的にならずに「いかに客観的な証拠を固めるか」が重要です。相手に問い詰める前に、どのような証拠が手元にあるか、弁護士と一緒に整理することをお勧めします。
次回は、性格の不一致を原因とする離婚の注意点についてお話しします。