身寄りのない方が亡くなった場合や,相続人全員が相続放棄申述手続きをとるなどして,亡くなった方の相続人が一人もいない場合,遺産はどうなるのでしょうか。
また,その遺産を購入したい,あるいは処分したい第三者がいる場合,勝手に処分などできるのでしょうか?
今回は相続人のいない遺産についてお話ししたいと思います。
相続人がいない遺産はそのままでは処分できない
相続人がいない遺産は,処分権限がいわば宙に浮いた状態になります。
遺産に対して利害関係を持つ人(例えば,遺産が建物の場合,その建物が建っている土地を貸していた人など)がいる場合でも,その人が勝手に遺産を処分できるわけではありません。
万が一,勝手に壊したり売ったりすれば,それは権利のない人が勝手に行ったことになりますので,権利移転せず,場合によっては犯罪になってしまいます。
相続財産管理人の選任が必要
では,どうすればそのような処分ができるのでしょうか。
この点,そのような処分をする場合には,裁判所で相続財産管理人の選任を行う必要があります。
相続財産管理人というのは,相続人のいない亡くなった人の代わりに,遺産の処分権限を付与された人です。
相続財産管理人が選任されれば,相続財産管理人にお願いして売却や処分などしてもらうことができます。
相続財産管理人は裁判所の許可などをもらいながら動く
相続財産管理人は原則として遺産を守る動きをするのですが,裁判所の許可をもらえば売却や処分も可能になります。
ですので,先ほどの利害関係人のような人は相続財産管理人と協議して,裁判所の許可をもらった上で,売却や処分をしてもらうことになります。
残った遺産はどうなる?
残った遺産について,相続財産管理人はまず,相続人が本当にいないか,公告という方法を使って調査することになります。
相続人が見つからない場合や,急を要するものについては,処分や売却をして財産をお金に換えるなどします。
債務がある場合には,その遺産の範囲で支払をします(支払っても完済にならない場合には,最終的には弁済は受けられなくなります。)。
その後,特別縁故者という相続人ではないが,亡くなった方を生前にお世話した人などがいれば,裁判所がその方に遺産を分けます。
そのような方がいない,または,分けても遺産が余る場合には,最終的には国に寄贈します。
遺言の重要性
身寄りがない方が亡くなると,その遺産は最終的に国のものになってしまうことがあるということです。
生前にその遺産を引き継いでくれる人を見つけておき,遺言を書いておいた方がその方にとっては良いかもしれません。