遺言や遺産分割など相続に関する相談の場合、関係者が多いこともあり、通常の法律相談と異なる注意点があります。
また、そもそも相続とはいえないものも相談に入ってくることもあり、一定の注意を払わないと、相談の効果が薄れてしまうこともあります。
そこで、今回は、遺言や遺産分割など相続に関する相談における注意点についてお話ししたいと思います。
利益相反の可能性
まず、よくあることとして、相談の際、他の相続人と連れだって、複数人で相談に来られることがあります。
事前にお申し出があれば、注意点についてアナウンスできるのですが、お一人で相談予約をされ、当日、複数名でいらっしゃることもあります。
相続に関する相談の場合、相続人が複数名いらっしゃると、それぞれの立場によって、もっとも良い相談の回答が異なることもあり得るため、十分な相談にならないことがあります。
場合によっては、相続人同士で利益が反するため、相談できないこともあります。
例えば、相続人5名のうち、3名がいらっしゃって、他の相続人に連絡が取れないとか、他の相続人が使い込んでいるなどという相談をする場合があるとしましょう。
そのような場合、いらっしゃった3名では、利益が共通しているようにも思えますが、蓋を開けてみると、1名は方法によっては多く遺産を取得できるけれども、残り2名は3名平等にしてほしいと考えていた場合、弁護士は双方に良い相談はできませんので、相談ができない、または共通する事項しか回答できないということにならざるを得ないのです。
また、引き続き依頼をしたいとなると、利益相反としてお断りしなければならない場面もあります。
ですので、相続の相談の場合、まずはお一人で相談された方が良いでしょう。
なお、遺言を作成する場合の、遺言を作成する方と遺言で受け取る方の両方が相談に来られる場合も同様です。
しっかり話が詰めてあれば良いのですが、そうではない場合、同様の問題が生じますので注意しましょう。
亡くなった方の資産に関する必要性
また、相続の相談の場合、亡くなった方の資産(借金も含みます)の相談が主となりますが、いつのまにか、亡くなった父の資産ではなく、ご存命の母の資産の話になったり、相続人同士の借金の話になるなど、話がごちゃごちゃになってしまうことがあります。
そうしますと、相談がスムーズに進まなくなりますので、相談前に、どの資産や借金が誰の名義なのか、聞きたいことは誰の話なのかを明確にして相談しましょう。
事前にメモなどにまとめておいて、当日持参すると良いでしょう。