ご家族が亡くなった直後は、葬儀の準備などで多額の現金が必要になります。しかし、故人の預貯金をどのように引き出すかは、後の親族トラブルを避けるために非常にデリケートな問題です。法改正で新しくなった引き出しのルールと、手続きの期限について解説します。
1. 葬儀費用の準備と「仮払い制度」の活用
以前は、遺産分割協議がまとまるまで故人の預貯金は一切引き出せませんでしたが、民法改正により、各相続人が単独で一定額を引き出せるようになりました。
- 遺産分割前の仮払い制度:他の相続人の同意がなくても、一つの銀行につき最大150万円(計算式:相続開始時の預貯金額×1/3×法定相続分)まで払い戻しが可能です。
- 注意点:勝手に引き出して使い込んでしまうと、他の相続人から不信感を抱かれる原因になります。払い戻したお金を何に使ったか(葬儀費用など)、領収書を保管して透明性を確保しましょう。
2. なぜ「口座凍結」が必要なのか
銀行が名義人の死亡を知ると口座は凍結されます。これは「遺産を勝手に使い込ませない」という保全の役割があります。
- トラブル防止:特定の親族が勝手にお金を引き出せる状態を放置すると、後で「あのお金はどうなったのか」と激しい争いになるリスクがあります。
- 凍結のタイミング:葬儀費用の目処が立ち、上記の新制度(仮払い)で対応可能な状況であれば、速やかに銀行へ死亡を連絡し、口座を凍結させるのが安全です。
3. 勘違いしやすい「手続きの期限」
「3か月以内に分けなければならない」と焦る方が多いですが、遺産分割そのものに期限はありません。混同されやすい3つの期限を整理しましょう。
| 期間 | 内容 |
|---|---|
| 3か月以内 | 相続放棄・限定承認の期限。借金を背負いたくない場合はこの期間に決断が必要です。 |
| 10か月以内 | 相続税の申告の期限。遺産総額が基礎控除額を超える場合のみ必要です。 |
| 期限なし | 遺産分割協議。全員が納得するまで話し合うことができます。 |
葬儀前後の慌ただしい時期に、お金の問題で親族とギクシャクするのは避けたいものです。まずは「仮払い制度」を正しく利用し、並行して財産の全貌を把握することから始めましょう。
「銀行からお金を引き出したいが手続きがわからない」「相続税がかかるか判断してほしい」といったご相談を承っております。法的なルールに基づいた資金準備と、円満な遺産分割への道筋を一緒に立てていきましょう。