「配偶者居住権」とは
配偶者居住権は、2018年の相続法改正(2020年4月1日以降に開始した相続について適用)によって新設された、残された配偶者の居住権を長期的に保護するための制度です。
これは、被相続人が所有し、配偶者が相続開始時に居住していた建物を対象に、終身または一定期間、その使用や収益を無償で認める法定の権利です。
「配偶者居住権」の趣旨
この制度の主な目的は、高齢化した配偶者が長年住み慣れた家から立ち退きを迫られることなく、安定した生活を送れるようにすることにあります。
従来は、配偶者が自宅を相続すると、その価値が高い場合に、他の財産(預貯金など)を十分に受け取れなかったり、高額の代償金を支払う必要が生じたりすることがありました。
配偶者居住権は、所有権よりも低い価値として評価されるため、この権利を取得することで、自宅に住み続けながら、預貯金などの他の財産も相続しやすくなり、生活の困窮を防ぐ効果があります。
配偶者居住権の成立要件
配偶者居住権が成立するためには、次のすべての要件を満たす必要があります。
- 被相続人の配偶者であること
- 相続開始時に、被相続人が所有する建物に居住していたこと
- 相続開始時に、その建物が被相続人と配偶者以外の者と共有されていなかったこと
- 遺産分割協議、遺言、または家庭裁判所の審判により取得すること
配偶者居住権の注意点
無償使用と存続期間
配偶者居住権を取得した配偶者は、居住建物の全部について、無償で使用および収益することができます。
原則として存続期間は配偶者が亡くなるまでの終身ですが、遺産分割協議や遺言、家庭裁判所の審判によって、一定期間とすることも可能です。
登記の重要性
配偶者居住権を登記することで、その後に建物の所有権を取得した第三者に対しても、居住を続ける権利を主張できます。
建物の所有者は、配偶者に対し、この登記手続きに協力する義務を負います。
管理義務と制限
配偶者は、善良な管理者の注意をもって建物を使用・収益する義務(善管注意義務)を負います。
また、この権利は譲渡できず、所有者の承諾なく増改築したり、第三者に使用させたりすることもできません。
相続人間トラブルのリスク
配偶者居住権は配偶者の生活を守る強力な制度ですが、遺産分割協議において、他の相続人との間で紛争が生じやすい側面もあります。
例えば、配偶者が居住権の取得を希望する一方、他の相続人が不動産の換価を望む場合などです。
このような事態を避けるためには、遺言による事前の準備が非常に有効です。
配偶者居住権の設定や相続手続きでお悩みの場合には、早めに弁護士へご相談ください。