裁判(民事訴訟)に臨む際、「自分の口から裁判官にしっかり説明したい」と考えるのは自然なことです。しかし、テレビドラマのように法廷で自由にスピーチできるわけではありません。日本の裁判には厳格なルールがあり、伝え方を間違えると、どんなに大切な話も「判決の基礎」として扱われない恐れがあります。
裁判官にあなたの言い分を確実に届け、判断材料にしてもらうための正しいステップを解説します。
1. 裁判官が判断の基礎にするのは「書面」
裁判では、口頭で話したことよりも、事前に提出され「陳述(ちんじゅつ)」された書面が重視されます。なぜ口頭ではなく書面が基本なのでしょうか?
- 正確性の確保:「言った・言わない」を防ぎ、どのような主張がなされたかを正確に裁判記録(記録)に残すためです。
- 陳述の手続き:事前に「準備書面」を提出しておけば、当日は裁判官から「書面の通り陳述しますね?」と聞かれ、「はい」と答えるだけで、その内容が正式な主張として受理されます。
- 注意点:法廷でどれだけ熱弁をふるっても、書面になっていなければ「次回までに書面で出してください」と制止され、その日の発言は判断の基礎にならないことがほとんどです。
2. 直接話せるチャンスは「尋問(じんもん)」
書面だけでなく、裁判官が直接あなたの話を聞く手続きが「尋問」です。ここが、あなたの記憶や思いを直接伝える最大の機会となります。
- 質疑応答の形式:自由におしゃべりするのではなく、弁護士や裁判官からの「質問に答える」形で話を進めます。
- 主張とのセット:尋問はあくまで「書面で出した主張の裏付け」です。書面に書いていないことをいきなり尋問で話しても、唐突すぎて信用してもらえないことがあるため、事前の書面準備が重要です。
3. 「進め方」については口頭で伝えてOK
事件の中身(事実関係)ではなく、裁判の「進め方」に関する希望については、その場で口頭で伝えても構いません。
- 具体例:「和解の話し合いをしたい」「仕事の都合で次回の期日はこの日を避けてほしい」「証拠を出すのにもう少し時間がほしい」といった要望です。
- 裁判官の判断:これらは「訴訟指揮」に関わることなので、裁判官があなたの意見を聞いた上で、今後の進行を判断してくれます。
「裁判官が自分の話を全然聞いてくれない」と感じる原因の多くは、この手続き上のルールの違いにあります。裁判官はあなたの話に興味がないわけではなく、ルールに則った「書面」を待っているのです。
どのような構成で書面を作れば裁判官に伝わりやすいのか、尋問でどのような受け答えをすべきか。これらは戦略的な判断が必要な部分です。納得のいく裁判を行うために、まずは専門家と一緒に「伝えるべきこと」を整理してみませんか?