夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用(婚姻費用)を分担することが民法第760条に定められています。
これは、夫婦相互の生活保持義務と解釈されており、夫婦がそれぞれの生活を保持するため、いわば1つのパンを(空腹を満たしてから残りを渡すのではなく)相互で分ける権利及び義務があると考えられています。
他方で、夫婦には相互に貞操義務等があると考えられており、不貞行為は貞操義務等の違反として離婚原因になります(民法第770条1項1号)。
では、不貞行為をした方が不貞行為が原因で別居になった場合に、不貞行為をしていない配偶者に対し、婚姻費用を請求できるのでしょうか。
不貞行為をした本人の分の婚姻費用は請求できない
この点、各決定・審判例では、不貞行為をした本人の分の婚姻費用は請求できないとの結論をとっているものが多いです。
福岡高裁宮崎支部平成17年3月15日決定では、以下のように述べ、不貞行為を行なった方からの婚姻費用分担請求を否定しています。
相手方は、有責配偶者であり、その相手方が婚姻関係が破綻したものとして抗告人に対して離婚訴訟を提起して離婚を求めるということは、(中略)婚姻共同生活が崩壊し、最早、夫婦間の具体的同居協力扶助の義務が喪失したことを自認することに他ならないのであるから、このような相手方から抗告人に対して、婚姻費用の分担を求めることは、信義則に照らして許されない
不貞行為をした本人が子を養育している場合、養育している子の分は認められる
他方で、不貞行為をした方が子を養育している場合、子にかかる婚姻費用については、請求は否定されません。
大阪高裁平成20年9月18日決定は、以下のように判示し、婚姻費用を子の分にまで減額しました。
別居中の夫婦間の婚姻費用分担額は、義務者において、いわゆる生活保持義務を負担していることを原則として算定されるものであるが、当該別居に至った原因が、専らあるいは主として分担を求める権利者に存在する場合には、信義則上、上記義務は軽減され、分担額は、権利者が現に監護している未成熟子に係る養育費相当分に止められ、権利者に係る部分についてまで分担する必要はないものと解するのが相当である。
これは、子自身には不貞行為の責任はなく、子の養育の費用に関しては、親として負担する義務があることからの結論であると思われます。
以上のとおりですので、不貞行為をした方は、婚姻費用がもらえない、または、減額される覚悟は必要になります。
他方で、不貞行為をされた方は、1円も支払いたくないという気持ちがあるかもしれませんが、お子さんの分は支払う必要があることは理解しなければなりません。