合意で決めたことが法律と違う場合に合意をくつがえせるか

その他

当事者同士で合意をした後に、「実は法律のルールではもっと自分に有利だった」と知り、合意を取り消したいと考えるケースは少なくありません。
例えば、離婚の財産分与や相続の遺産分割などで、相場や法律の基準とは異なる内容で合意してしまった場合です。

果たして、一度成立した合意を「法律と違うから」という理由で覆すことはできるのでしょうか。

そもそも法律と異なる合意は有効なのか

結論から申し上げますと、その法律の条項が「強行法規」「任意規定」かによって結論が分かれます。

① 強行法規に反する場合(合意は無効)

社会の秩序を守るために、当事者の意思に関わらず強制的に適用されるルールを「強行法規」といいます。
例えば、労働基準法で定められた労働時間の上限を超える合意や、公序良俗に反するような合意は法的に無効となります。この場合、合意を覆す手続きすら不要で、自動的に法律の基準が適用されます。

② 任意規定に反する場合(合意が有効)

「当事者間で別の決め事がない場合にのみ適用される」ルールを「任意規定」といいます。民法の多く(財産分与、慰謝料、遺産分割など)はこの任意規定です。
この場合、法律のルールよりも「当事者の合意」が優先されます。したがって、法律の基準と異なる内容であっても、双方が納得して結んだ合意は法的に有効です。

「法律のルールを知らなかった」は通用するのか

任意規定に反する合意をしてしまった後に、「法律を知らなかった」という理由で取り消すことはできるのでしょうか。
残念ながら、「法的な基準を知らなかった」というだけでは、法的な「錯誤(勘違い)」には当たらず、合意を覆すことはできません。

例外的に、合意の前提となった「事実」に重大な勘違い(例:対象となる財産の額を桁違いに間違えていた等)がある場合には取り消せる可能性がありますが、ハードルは非常に高いといえます。


以上のとおり、プライベートな取り決めの多くは、一度合意してしまうと後から「法律と違うから」と修正することは困難です。
合意や契約書への署名捺印は、その内容が自分にとって不利益でないか、法的にどのような意味を持つのかを十分に理解した上で、慎重に行う必要があります。