裁判のニュースを見たり、実際に裁判を経験したりした方の中には、「どうしてこんな結論になるのか」「真実とは違う」と納得のいかない思いを抱く方も少なくありません。
なぜ、裁判所の判断と私たちの感覚にズレが生じることがあるのでしょうか。そこには、日本の裁判制度の根本的な仕組みが大きく関わっています。
裁判所は「自ら真実を探しに行く場所」ではない
意外に思われるかもしれませんが、日本の裁判所は原則として自ら積極的に事実を調査することはありません。これを専門用語で「当事者主義」と呼びます。
- 主張と立証は当事者の責任:民事裁判であれば原告と被告、刑事裁判であれば検察官と被告人側が、それぞれ自分に有利な事実を主張し、それを裏付ける証拠を出さなければなりません。
- 裁判所の役割は「審判」:裁判所はあくまで公平な第三者として、両者から提出された「土俵の上の材料」だけを見て判断を下します。
裁判所が自ら調査をしないのは、一見不親切に見えますが、どちらか一方に肩入れせず、不公平な裁判を防ぐための極めて重要なルールなのです。
現実に生じる「当事者間の力の差」
理論上は双方が平等に主張・立証することになっていますが、現実には当事者の間に大きな差があることが少なくありません。
- 手元にどれだけ客観的な証拠(書面や録音など)を持っているか
- 過去の事実をさかのぼって調査する能力や手段があるか
- 法的なロジックを正確に組み立てられるか
この「証拠を集め、提示する力」の差が、そのまま裁判の結論の差として現れてしまうことがあるのです。裁判所が「真実」ではなく「提出された証拠から導き出される事実」を重んじる以上、この差は決定的となります。
[Image: A scale representing the court’s judgment, balanced between the evidence presented by the plaintiff and the defendant]結論:証拠の収集がすべてを決める
以上の仕組みをふまえると、裁判において納得のいく結論を得るためには、何よりも「客観的な証拠」をどれだけ準備できるかが鍵となります。
どれほど正当な主張をしていても、それを裏付ける証拠がなければ、裁判所は「事実」として認めることができません。将来的にトラブルが予想される場合や、既に係争中の方は、普段からメールや書面、録音などの記録を意識的に残しておくことが、自分を守る唯一の手段となります。
「自分には証拠がないから無理だ」と諦める前に、ぜひ一度弁護士にご相談ください。ご自身では気づかなかったものが有力な証拠になることもありますし、弁護士会照会などの法的手段を使って証拠を収集できる場合もあります。