相手方との話し合いや取引などで,明確に返事をしないで進むことがあるかと思います。

 その場合に,後日争いになると,明確には返事をしておらず,結論がどうなるのか判断が難しい場合があります。

 ご本人としては,合意を否定したい場合には,返事はしていないことを強調することになりますし,合意を肯定したい場合には,返事がなかったことは反対ではなかったのだということを強調することになります。

 では,そもそも黙っていても合意などが成立することがあり得るのでしょうか。今回はこの点についてお話ししたいと思います。

 

合意の成立に必要なのは意思表示の合致

 そもそも民法上,合意や契約が成立するためには意思表示の合致が必要です。

 意思表示とは,簡単にいうと,その合意や契約の法的な効果を目指して合意や契約を行う意思を持ってその意思を表示することです。

 つまり合意や契約をしようと思って,その旨を表示する(例えば「買います」「売ります」など)ことです。

 そして,合意や契約の場合,合意の内容について,双方がその内容で合意しますと明らかにすれば合意などが成立することになります。このとき,書類の作成は条件ではなく,口頭での表示でも足ります(証拠が残るかは別の問題です。)。

 

黙示の意思表示

 そして,法的には黙示の意思表示というものが認められています。

 つまり,黙っていたことが意思を表示したと言えることがあるのです。

 ですので,黙示(黙っていること)でも合意や契約が成立することはあり得ます。

 

どのような場合に黙示の意思表示になるか

 では,どのような場合に,黙っていたら黙示の意思表示となってしまうのでしょうか。

 この点,一般的には双方のやりとり(話し合いの経緯など)から,黙っていることが意思表示したと見て良い場合に黙示の意思表示になると考えられるかと思います。

 すなわち,経緯によるということです。

 

黙ったままで合意と言われたくない場合には

 黙ったままで合意が成立したとは言われないようにするためには,経緯上,黙示の意思表示をしたと考えられないようにする必要があります。

 具体的には,反対なら反対の意思を述べるとか,後日決めますという保留の意思をはっきりさせるなど,相手方の話などに対し,しっかりとしたリアクションをとることです。

 事情によって異なる部分はあるにせよ,くれぐれもただ黙っていることがないようにしましょう。

 

 

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