急に身内が亡くなってしまうと,お葬式などでバタバタし,相続のことは後回しになってしまうことも多いですが,ある程度は早めに動かないと,あとで多額の借金が判明したり,相続人の一部がいつの間にか独り占めしていたり,何かと問題が起こることも少なくありません。
そこで,今回は急に身内が亡くなってしまったときに慌てないように一般的な相続の方法として遺産分割の流れをお話ししたいと思います。
♦まずは遺言がないか確認する
まず,亡くなった方が遺言を作成していないか確認する必要があります。
これは,法律上,遺言があれば,まずは遺言どおりに相続がなされますので,遺言で遺産をもらう人が受領を拒否するような例外的な場合を除いて,遺産を分割する必要がなくなるからです。
遺言には主に自筆証書遺言という亡くなった方が生前に自筆で作成する遺言と,公正証書遺言という公証役場という機関で作成する遺言の二種類がありますが,自筆証書遺言がないかについては,亡くなった人またはその近親者が保管していることが多いので,亡くなった人の身の回りを探してみることになります。
これに対し,公正証書遺言については,公証役場に一定の書類を出せば検索をかけてくれるシステムがありますので,これを使って探します。
なお,遺言が複数ある場合は,最新のものが法律上有効になりますので,仮に自筆証書遺言や公正証書遺言が手元にあったとしても,念のため公証役場で他の遺言がないか探してもらう方が確実です。
♦相続人と遺産を確認する
遺言が見つかった場合は別として,見つからない場合には,遺産分割の手続きが必要になります。
手続きといっても,役所などで遺産分割という手続きがあるわけではなく,相続人の皆さんで遺産の分け方を決めて,全員の合意が整ったら,遺産分割協議書という合意書を作成し,その合意に基づいて不動産の名義変更や預貯金の解約などを行うことになります。
そして,その分け方を決めるにあたっては,相続人全員で合意する必要がありますので,相続人はだれかを書類(戸籍など)を取って確認します。また,分ける対象も明確でないともめる原因になりますので,遺産として何があるのかを調査して確認することになります。
とはいえ,一般的にはこの段階が遺産分割における第1のハードルとなります。最初からだいたいのことが把握できている場合を除いて,相続人の一部が確認できなかったり,遺産の調査がうまくいかなかったりすることがよくあるからです。
この段階で行き詰ってしまった場合には,一度弁護士に相談することをお勧めします。
♦相続放棄や特別の方式の相続は3か月以内
ここで注意しなければいけないのは,相続を放棄する場合,または財産よりも借金が多い場合は相続しないという限定承認をする場合には,自己のために相続の開始があったことを知ったとき(例えば親が亡くなったことを知ったとき)から3か月以内に家庭裁判所で一定の手続きを経る必要があります。
ですから,上記の調査などしている間に3か月経ってしまうと,後日多額の借金が判明しても相続放棄ができず,借金を支払わなければならなくなってしまいます。
他方,調査が3か月で終わらないことはよくあります。
そこで,そのような場合には,相続放棄等の申述期間(手続きをする期間)の延長を申請することになるのですが,この続きは次回にお話ししたいと思います。
(一般的な相続・遺産分割の流れと注意点②に続く)