では,遺言を作成する場合,どのような手順で作成すれば良いのでしょうか。
自分の財産,債務,心配を書き起こす
まず遺言を作成する前に,ご自身の財産や債務(借金など),心配事などをとにかく書き起こしてみます。
遺言の中心はどの財産をどなたが相続するのかということになりますので,まず財産を列挙することは大切です。
また,債務(借金など)はどなたが負担するのか遺言に記載していても,債権者(借金の借りた先など)には無関係なことですので,拘束力はありませんが,とりあえずどうしたいか考えておきます。
さらに,遺言で拘束力を持たせられるかは別として,ご自身に万が一のことが起きた場合の心配事を考えておきます。
書き起こした内容のうち,遺言に記載するものを考える
書き起こしたもののうち,遺言に記載するまでもないもの(例えば,すぐに自分で解決できそうなものや,ご家族などにお話ししておけば済みそうなこと)を消していきます。
ただ,この時,遺言に書いても意味がないかどうか(拘束力があるかどうか)は考えない方が良いでしょう。遺言に記載して意味があるかどうかは,弁護士など専門家でないと判別がつかない場合も多いですし,場合によっては拘束力がなくとも書いておく意味がある場合もあります。ですので,とりあえずは多めに残しておく意識で,これは書かなくてよいということを消していきましょう。悩む場合はとりあえず残しておきましょう。
調査や相談をする
残った内容は遺言に記載することになりますが,自筆証書遺言を作成する場合でも,法的に有効な記載にしておく必要があります。
ですので,遺言書にどのように書けばよいか調べる必要があります。
最近では遺言書を簡単に書けるキットなども販売していますので,そのようなものを利用されるのも有効です。ただ,一般に販売されているものは特殊な事項には対応していないことがほとんどかと思いますので,普通に調べてわからないようなものは,弁護士など専門家に相談した方が良いでしょう。
また,財産の特定のために,資料が必要なこともあります。
その場合,不動産であれば登記簿謄本(現在は全部事項証明書)など,法務局や役所に資料を取得しに行く必要がある場合もあります。
もし弁護士などに相談されるのであれば,その際に資料についても教えてもらえるかと思います。
遺言書を作成する
内容や記載方法が固まったら遺言書を作成します。
自筆証書遺言の場合,目録以外は自筆する必要がありますので,文面をパソコンなどで作成していた場合,目録以外の部分は自筆で便せんなどに書き写すことになります。
目録はパソコンなどで作成していた場合,印刷して,記載のある面には全て署名押印をします。
記載した遺言書には必ず日付,氏名を記載し,押印もしてください。
場合によっては,記載したものを持参して弁護士に相談するのも良いでしょう。
自筆証書遺言の保管制度を利用する場合には,封をせずに法務局に持参することになりますが,保管制度を利用しない場合は,改ざん防止のため,封筒に入れて封をし,「遺言書」と記載するなど,遺言書が入っていることがわかるような記載にします。
もし,ご家族など遺言書があることを知らせる場合には,自筆証書遺言の場合,遺言者の死後,家庭裁判所での検認という手続きが必要になりますので,その旨もお話ししておくと良いでしょう。
次回は公正証書遺言の作成などについて解説します。
(遺言のすすめ④につづく)