配偶者が一方的に帰ってこない場合や生活費を入れない場合,離婚原因になることもあります。
「悪意の遺棄」にあたれば離婚原因になる
配偶者から悪意で遺棄された場合は,離婚原因になります(民法770条1項2号)。
ここでいう悪意の遺棄とは,正当な理由もなく故意で配偶者と同居しない,面倒をみないということをいいます。
ですので,DVから身を守るための別居や単身赴任は悪意の遺棄とはいえませんが,ただ勝手に出て行って帰ってこない場合には悪意の遺棄といえます。
また,収入が十分にあるにもかかわらず,収入がほとんどなく生活できない配偶者に生活費をわざと渡さない場合も悪意の遺棄に該当する可能性があります。
慰謝料も請求できる
悪意の遺棄で離婚になる場合,相手方が有責ですので,慰謝料も請求できます。
正当な理由で別居している場合
例えば,配偶者と合意の上で別居している場合など,正当な理由で別居していても,長期間の別居により婚姻関係が破綻してしまったといえる場合には,その他婚姻関係を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)で離婚原因となることもあります。
他方,単身赴任で,生活費も渡しており,たまに家に帰るような場合には,離婚原因にはなりません。
正当な理由での別居の場合は,様々な事情を考慮した上で,婚姻関係が破綻しているといえる場合に離婚原因となることもあるということです。
生活費を入れない場合
配偶者が生活費を入れず,離婚を考えている場合,離婚が決まるまでは時間がかかりますし,別居などしたいと思っても先立つものがないこともあります。
このような場合,離婚の話を進めるのと同時に,または先立って婚姻費用(生活費)を請求する手続きを行った方が良いと思います。
具体的には,話し合いでは難しい場合には,裁判所で調停や審判という手続きを行うことになります。
調停という話し合いの手続きで決まらない場合には,審判といういわば裁判で裁判所が配偶者の支払うべき婚姻費用(生活費)を決定します。
調停や審判で決まった場合,差し押さえなどもできるようになりますので,強力な効果があります。
以上のとおり,一方的別居や生活費を入れない場合,経緯によって離婚が認められることもあります。生活費を入れない場合には,生活費の支払を求める手続きができます。
(離婚原因ごとの注意点⑥に続く)