不貞行為などを行ってしまった夫または妻から離婚請求をする場合には,離婚原因を作った側からの離婚請求になるため,他の事例とは異なる注意点があります。
最高裁判決の要件を満たす必要がある
不貞行為な離婚原因を作ってしまった方が離婚を求める場合について,最高裁判所の判決で,以下の要件を満たすことが必要とされています。
① 夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと
② 未成熟子が存在しないこと
③ 相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的にきわめて過酷な状態におかれるなど離婚請求が著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のないこと
長期間の別居が必要
上記最高裁判決からすれば,まず別居を長く続けることが必要となります。
では,どのくらいが長期といえるかについては,年齢や同居期間との比較にもなり,一律には言い切れません。13年でも認めなかった事案や6年でも認めた事案もあり,何とも言い難いところです。
未成熟子が存在しないこと
お子さんがいない,または,お子さんが皆成人している場合にはこの要件をみたします。
相手方が過酷な状況にならないようにする
長期の別居や未成熟子がいないという要件をみたしたとしても,相手方が精神的,社会的,経済的に過酷な状況に陥らないようにすることが必要になります。
具体的には,高額の財産分与や生活費の援助など,経済的な手当てをする,または,相手方が働いていて離婚しても十分な生活ができるようにする必要があります。
また,精神的な状態も関係してきますので,相手方配偶者には誠実に対応することが必要になります。
上記の要件を満たさない場合
以上に述べた3つの要件は,裁判で離婚する場合の要件です。
ですので,協議離婚や調停離婚の場合には,上記の要件がみたされなくても離婚は可能です。
ただ,協議離婚と調停離婚は話し合いによる離婚なので,相手方の納得が得られるように話し合う必要がありますので,場合によっては財産分与などの点で不利な解決でも飲まざるを得ない場合もあります。
以上のとおり,有責配偶者が離婚を求める場合には,通常の離婚よりも重い条件が課されますので,注意してください。