相続について、被相続人がなくなる前に、自らの意思を相続に反映させる手続きとして遺言があります。
遺言が残っている場合、被相続人がなくなったときには、原則遺言どおりの相続となり、遺言に書いていないものがある場合には、遺産分割協議を相続人全員で行うということになります。
相続人全員が遺言と異なる遺産分割協議を行うこと自体は可能ですが、ほとんどの場合、そのような合意が成立することは稀で、遺言どおりの相続となるのが通常です。
では、亡くなる前に書類を作成せずに、親族に意思を言い残していた場合、遺言になるようなことはあるのでしょうか。
今回は、亡くなる前に親族に言い残しておいた言葉は遺言ではないのかについてお話ししたいと思います。
遺言は法律で要件が決まっている
まず、遺言は、被相続人がなくなった後、それが真意であったかなどをなくなった本人に確認するわけにはいきませんので、法律で厳格な要件が決まっています。
通常の合意や契約は口頭でも成立するとされていますが、遺言の場合、口頭のものは認められません。
遺言と言えるためには、書面で、本人が全部自筆で記載し(目録について一部例外あり)、作成した日付、氏名を自筆で記載し、印鑑を押すことで認められます。
仮に訂正をする場合にも、訂正の方法が細かく定められており、書類もかなり厳格なものになっています。
では言い残しておいたことはどう扱われるか
以上のとおりですので、意思を残すには遺言を作成しておくことが大変重要です。
言い残しておいた言葉は遺言ではないため、直接法的な効力はありませんが、相続人が故人の遺志を尊重して遺産分割協議をすることはあり得ます。
ですので、全く無意味とまでは言えませんが、確実性はないため、できる限り遺言を残しておきましょう。
字が書けない場合には
なお、字が書けない場合には、自筆で遺言を作成することは難しいですが、公証役場で公正証書遺言を作成することができます。
遺言は大切なものですので、できる限り元気なうちに残しておきましょう。
要件などが不安な場合には、弁護士に相談するか、公正証書遺言を作成しましょう。