因果関係が必要
損害賠償請求には,相手方の行為と損害発生の間に因果関係が必要です。
因果関係というのは,原因と結果の関係ですが,法的には「相当因果関係」という考え方により,原因と結果の関係に加えて,原因から結果が発生することが一般人から見て相当であることという考え方が取られています。
例えば,交通事故の場合,相手方から追突された例を考えれば,相手方からの追突で,ケガをして,治療費や通院の交通費がかかることはだれが考えても明らかかと思います。ですので,治療費や交通費は損害賠償の対象となってきます。
では,追突事故により,婚約者とのデートに遅れてしまったとして,その遅刻をきっかけにぎくしゃくしてしまい,最終的に事故の半年後に婚約が破棄されることになってしまった場合はどうでしょうか。この場合,事故はきっかけにはなっていますので,原因と結果の関係はありそうですが,一般人から見れば,交通事故でデートを遅刻したからといって,婚約破棄になることは行き過ぎではないか,半年の間の様々なことが積もり積もって婚約破棄になったのではないかと考えるのが通常ではないかと思います。そうすると,一般人から見れば交通事故から婚約破棄に至る過程は相当とはいえないため,相当因果関係はなく,損害賠償は認められないということになります。
損害についての評価(損害の算定)
損害の発生という条件に関連して,損害を金銭評価する必要があります。
物が壊れた場合は,物の価値を市場価値から算定することになりますし,減収したということであれば減収した金額が損害となります。
精神的苦痛については,他の裁判例等を参考にいわゆる相場的な形である程度の算定がなされます。
問題は例えば市場価値は安いまたは0円だが,本人が思い入れのある思い出の品であったり,市場が形成されていない希少品であったりする場合です。この場合,原則として市場価値はないため,ご本人の思いとはかけ離れた価値の算定がなされる(場合によっては0円)ことがほとんどです。ただし,そういった品であることを立証して,慰謝料などが発生する場合もあります。
以上のとおり,一口に損害賠償といっても,思ったほど広く認められるわけではありません。何か損害が発生したときは,賠償請求できるものかについて弁護士に相談しましょう。