裁判,調停,公正証書などで決まったことでも,相手方が支払をしない場合もあります。その場合は,強制執行という手続きをすることになりますが,相手方の資産を差し押さえるなどするため,相手方に資産があることが必要です。ただ,相手方が裁判などの間に資産を隠したりすることもあり得ます。そのような資産隠しを防ぐ方法はないのでしょうか。
民事保全手続
実は,そのような強制執行逃れに対して,法律は民事保全という手続きを準備しています。
これは,裁判などを行う前に,相手方の資産を仮に差し押さえるなどを行う手続きです。
いわゆる仮差押えとか仮処分といったものです。
どうすれば手続きができるのか
民事保全手続を利用するためには,まず,裁判である程度勝てそうな状況が必要です。つまり,こちらの請求が書面などの資料である程度証明できることが必要です。
また,仮差押えなどをしておく必要性(資産隠しの可能性)なども必要になります。
さらに,民事保全の場合,一定の担保金を裁判所に納める必要もあります。これは,万が一根拠が薄弱な濫訴などの場合には,相手方に対して損害賠償を支払う必要がある場合があるため,それを担保するものです。
これらがそろうのであれば,民事保全の利用も視野に入れた方が良いかもしれません。
民事保全後は訴訟提起が必要
民事保全はあくまで訴訟から強制執行への流れを担保するものなので,民事保全後は訴訟提起を行うことを前提としています。
したがって,交渉のみを行う予定の場合には利用できません。
民事調停や家事事件の場合
この場合には,調停前の保全処分や,審判前の保全処分といった手続きが準備されています。
もし資産を隠されたら
例えば,これらの手続きができない交渉事件などの場合,資産を隠されることはなかなか防げません。
しかし,強制執行の法律が最近改正になったことで,預貯金などの照会手続きができたため,全てを隠すことは難しくなってはきています。交渉などにおいては,交渉後の資産隠しはこの照会手続(第三者情報開示)を利用して探し出す必要がでてきますが,交渉中であれば,相手方の資力について資料を求めることも一つの手段です。ケースバイケースではありますが,あまりに資料を出さない場合には,交渉を打ち切って民事保全や訴訟等も視野にいれる必要があるかもしれません。