一般に,支払いなど何か請求をする場合,相手方が支払ってこないときには,支払いを請求する方が裁判などの手続きを行うことが通常です。

 しかし,場合によっては,請求する側が裁判などの請求をとらず,しつこく請求行為を繰り返し,相手方の生活の平穏が害されるなど,不都合が生じることもあります。

 このような場合,相手方としては,裁判でもなんでもやってくれと回答することになるのでしょうが,それでも請求がやまず,対処に苦慮することもあり得ます。

 そこで,このような場合に,請求される立場である相手方の方から裁判などの手続きをとることができるのでしょうか。

 

調停やADRなど話し合いの手続き

 調停やADRなど,話し合いを基軸にした手続きは,話し合いですので,当然相手方側からも手続きは可能です。

 話し合いはどちらから申し込んでもよいからです。

 この場合,単純に申立人として手続きをすれば,手続きが通常どおり進みます。

 もっとも,あくまで話し合いがベースですので,意見が食い違い,話し合いが決裂してしまえば結論は出ず,従前どおり紛争が続くことになります。

 

裁判(訴訟)はできるか

 では,強制的に結論を出す裁判(訴訟)はどうでしょうか。

 実は,裁判には債務不存在確認訴訟という種類の裁判があります。これは,こちらが支払うべき債務がいくら以上ない(または全くない)ということを確定させる裁判です。

 請求される側が裁判を起こす場合は,この種類の裁判を利用すれば裁判を起こすことができます。

 この裁判をする場合には,自分が認める金額がある場合には,その金額以上はないこと,特に支払う義務自体がないという場合には,債務が全く存在しないことを裁判で決めてもらいます。

 請求される側が原告として裁判を起こすことになります。

 

債務不存在確認訴訟の注意点

 債務不存在確認の裁判は,いくつか注意点があります。

 まず,この裁判を起こせるのは,確認の必要性がある場合だけになりますので,請求を繰り返されているとか,身に覚えのない請求がされているという場合に利用できますが,何らの請求もない状態で利用することはできません。

 次に,裁判には訴訟物といって,既判力(すでに判決で結論を出したことについて後日争えないという効力)が発生する範囲が決まっているのですが,債務不存在確認においては,ないことの部分が訴訟物となりますので,残存する債務については,既判力を持たないとされている点があります。

 専門的な話で難しいかもしれませんが,要するに,請求する側は漫然とその裁判を受けてしまうと,金額が定まったようで定まってないという事態に陥ることがあるということです。

 ですので,債務不存在確認訴訟を提起すると,請求する側が反訴を起こし,結局は単純な請求訴訟になることが多いです。

 

不当な請求がされている方へ

 このように,何か請求を受けている場合,自分からも裁判で決着をつけることができます。

 ただ,裁判はなかなかご本人で行うことは難しいので,裁判をお考えの方はぜひお近くの弁護士にご相談ください。

 

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