昔は通信手段が限られていたため、証拠というと、書類が一般的でした。
しかし、現在では、個人間のみならず、個人と企業とのやりとりや企業間のやりとりまで、メールやLINEなどのやりとりが広がっています。
このため、いざ紛争が発生した場合、書類がほとんどなく、メールやLINEのやりとりしか残っていないということが多い状況です。
このような場合、メールやLINEのやりとりも証拠として使えるのでしょうか。
民事の領域では、必ず書面を作成しなければならない場面は少ない
個人や企業の関係での法的関係について民事といいますが、この民事の領域では、口頭による合意も合意として有効という考えが原則論になっています。
保証契約など一部例外はありますが、おおよそは口頭の合意でも法的効果があり、書面の作成は要件とされていません。
したがって、必ず書面を残さなければならないという場面はかなり例外的で、メールやLINEのやりとりでの合意も法的に有効になります。
メールやLINEのやりとりも証拠になる
以上の考え方から、メールやLINEのやりとりでも十分に証拠になります。
ですので、例えば借用証などがなくても、LINEのやりとりでいくらをいつ返す約束で貸し借りしたというようなことが明らかであれば、LINEを証拠として貸金の返還を求めることも可能になります。
メールやLINEを証拠とする場合の注意点
ただし、メールやLINEを証拠とする場合、いくつか注意点があります。
まず、送付先の特定が必要になります。
メールアドレスやLINEのIDなどについて、個人が特定されないと、誰とのやりとりかが不明になりますので、他の情報(携帯電話のアドレス帳)などで情報を補足する必要があります。
次に、内容が不明確でないことも必要になります。
契約書などの場合、かなり細かく記載がありますので、一般的には内容が明確になっていますが、メールやLINEの場合、文書も短く、当事者同士ではわかる表現でも、第三者からは何を言っているのかわからない場合があります。
この場合、これまでのやりとりの全体を確認し、内容が明確といえるか判断する必要があります。
また、入手方法の問題もあります。
本人同士のやりとりで、こちらが適法に入手したものであれば全く問題ありませんが、他人とのやりとりなどの場合で、当事者の了解なく取得したものは、取得の経緯によっては、証拠として利用できないこともあります。場合によっては、入手することが犯罪にあたる場合もあります。
書面の場合ですと、手元にあるかないかだけの問題になるので、こういった部分は問題になりませんが、メールやLINEの場合ですと、IDやパスワードなどにより、他の端末でも取得できるなどの特殊性があり、このような部分が問題になります。
以上のとおり、メールやLINEも十分証拠になりますが、上記のような各種注意点には注意して利用等してください。