民事訴訟(民事裁判)は、当事者双方の主張及び立証を前提に、裁判官が判決という判断をし、原告の請求が認められるか認められないかを決めることで、紛争を解決する制度です。
判決で請求が認められれば、相手方が任意に支払いなどをしなくても、強制執行をすることで、権利の実現を行うことができるようになります。
もっとも、民事訴訟の手続きの中では、当事者間が合意をして紛争を解決する和解という終結方法もあります。
和解と聞くと、例えば、紛争においてこちらに正義があると考えている人などからすれば、弱気な方法ではないかと考える人もいるでしょうし、単純に間を取られるものというイメージを持っている方もいると思います。
しかし、和解にもメリットもあり、紛争の内容によっては、十分に検討に値するものです。
そこで、今回は民事訴訟で和解するメリットとデメリットなどをお話ししたいと思います。
和解のメリット
判決では、請求が認められるか認められないかという判断ですので、柔軟な条項(例えば分割払いなど)を入れることはできません。
和解では、あくまで合意を行うことになりますので、柔軟な条項を入れることが可能です。
ですので、例えば、請求しているもの以外に、本当はいろいろな条件をつけたいというような場合や、周辺の紛争についても解決しておきたいという場合、判決よりも和解の方がメリットが大きくなります。
また、判決の場合、強制的に決めますので、支払いなどをする方が納得せず、任意で支払ってくるなどのことが期待できない場合が多くあります。
和解の場合は、双方が納得して解決することになりますので、支払いなどをする側が任意に支払ってくる可能性が高くなります。
さらに、判決の場合、裁判官の判断に任せられますので、結果は最後の最後まで分かりません。途中までは勝っている様子だったのに、判決では負けてしまうこともよくあります。
和解の場合は、勝ち負けではありませんし、両当事者が納得して結論を出すことになりますので、判決のような結論が分からないということはありません。
和解のデメリット
他方、和解では、事実の白黒はつきません。判決も経緯を十分に確定するものではありませんが、結果の白黒はつきますので、とにかく自分が正しいということを知らしめたいという場合は和解は向きません。
また、和解は訴訟の段階によっては、まだ十分な主張立証をしていない場合があり、必ずしも紛争の実態を取り込んだものになるとは限りません。ですので、和解の話の際に、相手方や裁判所がこちらの主張を理解していないまま進んでしまうこともあり得ます。
和解になった場合
上記のようなメリット・デメリットを考えて和解するかどうかを決めることになりますが、民事訴訟で和解をした場合には、和解調書という書類が作られます。この書類は裁判所が作成しますので、当事者の押印などはいりません。
和解調書は判決と同じ効力がありますので、万が一、支払いなどがされなかった場合には、強制執行をすることもできます。
和解の話が出たらどうすればよいか
和解は以上のようなものですので、民事訴訟で和解の話が出た場合、私としては積極的に検討すべきではないかと思っています。
もちろん納得できないという場合は、そのまま判決までがんばっても良いと思いますが、和解自体は必ずしも悪いことではなく、メリットも多いものですので、できれば一度真剣に検討した方が良いと思います。