法律というと、六法全書という分厚い本を思い浮かべてしまい、とにかく難しいものというイマージをお持ちの方もいらっしゃると思います。
また、弁護士はその法律をすべて(またはほとんど)を覚えていると考えている方もいるでしょう。
しかし、法律には共通の構造があり、弁護士はそれをとっかかりにして、各事件などに法律をあてはめています。
共通する事項を前にまとめている
どの法律にも共通することですが、同じ内容のものを前にくくりだして配置しているという構造になっています。
これをパンデクテン方式というのですが、例えば法律の内容がA+BとA+Cになっている場合、Aを最初に記載して、BとCをそれぞれ記載するという枠組みになっています。
ですから、弁護士は、何か相談などがある際には、A+Bの話を考えなければいけないとすると、最初の方のAを見ながら、Bも見るという考え方をしています。
多数ある法律の関係も共通するものがまとめてある
そして、法律相互も同じような構造をしていることがあります。
例えば、民事という領域の全般にかかわるものとして民法がありますが、これは私法の一般法と呼ばれており、すべての基礎になります。
そして、その基礎を前提としながら、例えば消費者の領域では、消費者契約法があり、私法の特別法として、一般法の原則ではない法律が定められています。
この場合、消費者の領域では消費者契約法の定めが優先しますが、消費者契約法に規定のないものは民法の定めによることになります。
言葉も共通するものをまとめている
また、そもそも法律の一つ一つの条文も、世の中にある事象を共通するものにまとめているという構造をしています。
例えば、不動産を売買したときに、その所有権は買主に移動しますが、登記名義を変更しないと、他人から見たら売主のものだと思ってしまいます。そこで、民法では、登記名義がないと、買主は「第三者」にその権利を対抗できないとしています。
本来は、不動産を買おうと思う人や不動産を直してほしいという人など登記がないと対抗できないとすべき人は色々いますが、共通するものとして売主と買主以外の人という意味で「第三者」という用語にまとめているのです。
法律は解釈が重要
では、買主が死亡して相続した人がいる場合にはどうでしょうか?この場合、買主自身ではありませんから、「第三者」といえそうです。しかし、売主からすれば、買った人の地位を相続した人は譲り受けているから、全くの第三者というのはおかしいと考えるでしょう。
そこで、「第三者」というのはどの範囲かという法律の解釈が問題になります。
法律の解釈の方法
法律の解釈は法律を定めた趣旨から解釈します。先ほどの「第三者」の話でいえば、「第三者」に対抗できないとした趣旨は、登記がされてなければ売られてはいないだろうという期待を保護することにもあるとすれば、第三者とはその保護に値する人だけになります。そうすると、買主やそれに準じた人(相続人など)は自分で登記できますし、第三者として売主が持ち主だといえるとしてしまうのは不当ということになります(正確には「第三者」は当事者またはその包括承継人以外の者で、不動産物権の得喪及び変更について登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者と解釈されています。)。
弁護士など法曹の仕事
以上のとおり、法律は共通する部分をまとめることで汎用性を持たせていますが、そのことで逆に解釈を必要とするものになっています。
弁護士など法曹の仕事は、このような解釈を通じて、妥当な紛争解決を図ることにありますので、法解釈学が専門領域になります(ですので、六法を全部覚えればできる仕事ではありませんし、六法を全部覚えているわけではありません。)。