話し合いなどでは解決できない場合,最終的には裁判で問題を解決する場合があります。
裁判の場合,皆さんもご存じのとおり,証拠が必要となります。
もっとも,裁判では,証拠の必要な範囲が決まっており,明文があるわけではありませんが,理論上,どちらがその証拠を出すべきか決まっています。
今回は証拠の提出に関する話をしたいと思います。
立証責任という考え方
裁判では,立証責任という考え方があり,証拠を提出して十分に立証しないと,その事実に関して,立証責任を有する方が不利に扱われると考えられています。
すなわち,ある事実について立証責任が原告にある場合には,証拠などが出ていないと原告が不利になりますし,立証責任が被告にある場合には,証拠などが出ていないと被告が不利になるということです。
ひるがえって,不利になる方が証拠を出さないと負けてしまうおそれがあるため,証拠は立証責任を負う方が提出すべきということになります。
争いのない事実は立証不要
民事裁判の場合,当事者に争いのない事実は立証がなくても認められますので,立証責任の話は,争いのある事実についてということになります。
ですので,例えば,売買契約で金額のみが問題になっている場合,売買をしたこと自体は争いがなければ,売買したことの立証は不要ということになります。
交渉時には争っていなくても…
そうすると,交渉などの際に争っていない事実や,最初から当事者同士が前提としている事実があると,それは証拠が不要だということになりそうです。
しかし,交渉時は争っていなかったのに,裁判になって突然,前提事実を争ってくることは結構あります。
また,交渉時,お互い明言しなかっただけで,実は別の事実を前提に話していたということもあります。
したがって,どんな事実でも一応証拠はとっておくというのはかなり重要になります。
相手方も知っているはずは通じない
そして,裁判でいざ争いとなってしまうと,先ほど述べた立証責任が問題となってきてしまいますので,その段階で相手方も知っているはずなどという話は通じなくなってしまいます。
ですので,契約などを進める際には,いつどんなことが起きるか分かりませんので,証拠はしっかりととっておきましょう。