お子さんがいる場合に離婚をするためには,必ず親権者を定める必要があります。離婚届に親権者を記載しないと,受理されません。
離婚の協議でお互い親権者に争いがない場合は良いですが,争いがある場合には,離婚自体が進まなくなります。
親権に争いがある場合に,裁判所などはどのように決めるのか,そのまま争いが進めばどうなるのかがわかっていれば,無用な争いが防げる場合もあるかと思いますので,今回はこの点についてお話ししたいと思います。
親権者を定める場合の手続の流れ
離婚自体には争いがなく,親権者で争いがある場合,まずは,お互い協議することになります。協議を重ねた結果,一定の結論が出ればそれで親権者を定めることになります。手続きとしては,離婚届に親権者を記載して,役所に提出するという流れです。
他方,協議を重ねても決まらない場合,離婚について裁判所に調停申し立てを行い,調停の中で親権者を決めることになります。
調停は話し合いの手続きなので,協議同様,お互いが譲らないということであれば,親権者は決まりません。
ただ,調停で親権者の争いがある場合には,一般的に,裁判所の調査官による調査が行われます。
調査官調査では,現実の養育状況を確認する,当事者の話を聞く等,調査官が調査を行い,お子さんの立場から見て,どちらが養育した方が良いか,どちらが親権者にふさわしいかについて,一定の結論を出します(調査官が調査報告書を作成します。)。
そして,この調査官調査に結果は,後に行われる裁判でかなり重視されるものですので,逆にいえば,調査官調査の結果で,おおよその裁判所での結論が予想できることになります。
したがって,調査官調査の結果を踏まえて調停を行うと,親権者の争いは実質的に争う意味が失われ,一定の結論で合意できるということがあり得ます。
もっとも,その結果がどうあれ,双方がどうしても合意できないという場合があります。
その場合は,離婚の裁判で親権者を決めることになります。
そして,離婚裁判では,上記のとおり,調査官調査の結果も踏まえて,裁判所が親権者を決定します。
親権者を定める要素
裁判所や調査官が結論を出すに当たって考慮される要素については,色々あります。
現在の養育はどちらが行っているか,これまで養育を誰が行ってきたか,分担していた場合どのくらいそれぞれが養育を行っていたか,虐待などはなかったか,お子さんの現在の年齢,お子さんの状況,兄弟姉妹の有無,お住まいの状況,親族の協力の有無・程度,年齢が高い場合にはお子さんの考え,日常の生活リズム,面会交流の可否・程度等々です(経済的な状況は養育費がある関係で,それほど重視されません。)。
以上のような要素を総合して判断されることになりますが,全体として裁判所はお子さんの福祉を中心に考えますので,離婚への帰責性などは内容にはよりますが,判断の基礎にはならないと考えて良いでしょう。
以上のとおり,お子さんを取り巻く様々な要因から親権者の判断はなされますので,それぞれの要素を参考に親権者を考え,判断が難しい場合には,弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。