相手方が行方不明の場合,法的手続きをそのまま進めることはできません。
例えば訴訟などでは,相手方に対する書面の送達(相手方に書面を渡すこと)が必要になっており,行方不明の相手方には書面を渡すことができないからです。
もっとも,行方不明の相手方に対して法的手続きが一切できないのかというとそういうことではありません。
今回は行方不明の相手方に対する法的手続きについてお話ししたいと思います。
訴訟などの場合
まず,訴訟などの送達が必要な手続きに関しては,公示送達という制度があります。
これは,住所地に相手方がいない場合など,相手方の行方が知れず,書類の送達ができない場合などに,裁判所に一定の手続きをすることで,裁判所の掲示板に訴状等の送達すべき書面を掲示することで,送達したことにするという制度です。
訴訟などは権利保護の側面が強いため,行方不明の相手方でも訴訟等が可能なように,このような制度が準備されています。
意思表示の場合
また,訴訟外の意思表示(例えば,解約や時効援用など)についてはどうすればよいのでしょうか。
この場合にも,意思表示の公示送達という制度があります。
こちらも先ほど述べた制度同様,一定の手続きを行うことで,裁判所の掲示板に書類を掲示し,その文書が相手方に届いたことにするという制度です。
行方不明の相手方に対して意思表示をしなければならない場合に利用します。
その他の場合
その他,交渉や資産処分を行方不明の相手方に対して行う必要がある場合にはどうでしょうか。
この場合には,一定の場合に限り,不在者財産管理人の選任申立てを行い,管理人と交渉等を行うことで処理をするという方法があります。
もっともこの場合には,上記の公示送達とは異なり,管理人となる人の判断などが介入しますので,必ずしも考えているような結果になるとは限りません。
ですので,どの方法が良いかは,求めるものやかけられる費用(不在者財産管理人の選任では裁判所に予納金を積む必要があります。),緊急性等々様々な事情を考慮して選択することになります。