最近では「終活」という言葉が定着してきているように,自分の死後のことを今のうちに考えておこうという人が増えてきました。しかし,「自分はまだまだ元気だし。」「亡くなった後は子供たちが整理してくれるだろう。」などと考えて,何も準備していない人が多いのも事実です。そこで,今回は,遺言の重要性と手続きについてお話ししたいと思います。

 

もし遺言がなかったら?

 ご自身が急な病気や事故で万が一亡くなってしまった場合,遺言がなければどうなるのでしょうか。

 

相続人全員での手続きが必要

 人が亡くなった場合,その時点で相続が開始しますが,相続人が二人以上いる場合,遺言がなければ,ひとまず遺産は共有(相続人全員で所有している)と扱われます。

そして,遺産分割協議(相続人全員で遺産の分け方を合意すること)が成立するか,遺産を取得する1名の相続人以外の相続人全員が相続を放棄しない限り,その共有状態が続くことになります。

 そうすると,例えば,遺産である土地を売ってほしいという人がいた場合には,その人は相続人全員を相手に交渉や手続きをしなければならなくなります。また,遺産である預金を使ってお墓を建てようと思っても,全員で手続きをしない限り,預金をおろせなくなります。

 相続人全員が仲良しであれば問題ないのかもしれませんが,相続人間の仲が良くない場合や相続人の一部が遠方にいて連絡が取れない場合,上記のような手続きは難しくなってしまいます。

 

相続が“争”続に

 遺言がなければ上記のとおり遺産分割協議などを行うことになりますが,たった1名だけでも反対する人がいるだけで遺産分割協議は成立しませんので,協議とはいっても場合によっては戦争状態になってしまうこともあります。

 特にこれまであまり連絡をしてこなかった兄弟同士などの場合,お互いの状況が良くわかりませんので,「あいつは親の面倒を全然見てこなかった。」とか「親の面倒をみるといいながら親に面倒をみられていたのではないか。」というような不満が双方爆発し,話し合いにならないこともあります。

 

あくまで決めるのは相続人

 生前,相続人であるお子さんに,自分がなくなったらこうしてほしいと希望を話していたとしても,遺言がなければそのような話に拘束力はありません。

 ですから,ご自身に様々な希望があり,それを相続人になる人に伝えていたとしても,遺産分割協議が成立したときには,その希望とは全く違う内容になることも十分考えられます。

 

以上のとおり,遺言がないと,様々な点でご自身の思い通りにはいかないことになります。ですから,遺言を作成しておくことはとても大切なことなのです。

次回は遺言の種類や手続き,遺言を作成しておくべきタイミングについてお話ししたいと思います。

(遺言のすすめ②につづく)

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