裁判以外にも債務名義を取得する方法がある

 裁判で判決を取る以外にも債務名義(強制執行をするために必要な書類)を取得する方法がいくつかあります。

 

調停調書

 裁判所で裁判ではなく,話し合いによる手続きである調停を行った場合に,うまく合意が成立すると,調停調書という書類がもらえます。この調停調書は債務名義です。

 ですので,調停で決まったお金を相手方が支払ってこない場合,裁判はせずにそのまま強制執行が可能になります。

 

和解調書

 また,裁判をしたが,判決まではいかず和解して終わった場合でも,和解調書という債務名義が取得できます。この場合でも,相手方が和解内容を守らず,約束のお金を支払ってこなかった場合には,強制執行が可能になります。

 

仮執行宣言付支払督促

 支払督促というのは,裁判ではなく,裁判所で手続きをすると,相手方に通知が支払督促という書面が届き,特に異議申し立てなどの手続きを相手方がしなければ,その後,仮執行宣言をつける手続きをし,それも異議申し立てがないと,債務名義を取得できる制度です。

 異議申し立てがあると通常の裁判になってしまうため,必ずしも利用しやすいとは言えませんが,事案によっては有用に使える制度です。

 

強制執行受諾文言付公正証書

 上記とは異なり,単純に相手方と交渉して取り決めをする際に,万が一の準備をしておく方法があります。それが強制執行受諾文言付公正証書です。

 公正証書というのは,公証役場で作成する合意書です。公証役場で公証人という方が作成します。この公正証書には,強制執行になっても構いませんという趣旨の記載を入れることができ,その記載があれば,裁判をしなくても強制執行をすることができます。

 そして,その強制執行が可能な形の公正証書を強制執行受諾文言付公正証書といい,この書類が債務名義となります。

 強制執行受諾文言付公正証書は,相手方との合意で作成するものですので,契約などの当初から作っておくこともできますし,トラブルになりかけた時やトラブル発生後に話し合った結果で作成することもできます。

 ですので,相手との合意が整えば作成できるという点で,他の債務名義よりも広く利用できる可能性があります。

 

 次回は,債務名義取得後の話についてお話しします。

(相手が支払ってくれない!!(債権回収の問題)③に続く)

 

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