相手方の資産や勤務先など,差し押さえるための情報がわからない場合,どうしたらよいのでしょうか。

 

財産開示制度

 財産開示制度というのは,裁判所への申立てをして,債務者を裁判所へ呼び出し,債務者に自らの資産状況を陳述させる制度です。

 従前は,財産開示制度を利用できる前提として,判決など特定の債務名義を必要としていましたが,今回の改正で,全ての債務名義で利用可能となりました(債務名義とは何かについては本コラム「相手が支払ってくれない!!」の①,②をご参照ください。)。

 また,従前は相手方が出頭しない場合などに適用される罰則が過料という低い金額の罰金のようなものだったのですが,今回の改正で6か月以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰が科されることになりました。

 

第三者情報開示制度

 財産開示制度を利用しても,相手方が本当に全ての資産を開示するかは上記罰則があるとはいえ,わからない部分もあります。そこで,今回の改正で設立された制度が第三者情報開示制度です。

 

預貯金などの情報開示

 まず,銀行などの金融機関に対し,裁判所を通じて預貯金などの有無や内容を照会することができます。

 ただし,情報を開示された後,情報開示の事実について債務者に通知がなされますので,通知前に差し押さえをしないと,払い戻しなどで差し押さえの実効性がなくなってしまいますので,注意しましょう(なお,開示から通知までの期間は一般には1か月程度と考えられています。)。

 

不動産の情報開示

 これは登記所に対して裁判所から照会をかけ,不動産の所有状況を明らかにする手続きです。

 預貯金の照会と異なり,財産開示手続を先に行い,同手続きから3年以内の申立てを行うことが必要とされています。

ただし,不動産の第三者情報開示はまだ施行されておらず,令和3516日までに開始予定となっています。

 

勤務先の情報開示

 これは市町村などに裁判所が照会をかけ,勤務先などの情報を提供させる制度です。

 この手続きでも,財産開示手続を先に行い,同手続きから3年以内の申立てを行うことが必要とされています。

 また,この手続きは債務名義を取得している権利が養育費など一定の債権である場合しか利用できません。

 

以上,様々な条件はありますが,従前よりは強制執行に関して債権者に有利な改正がなされました。

そういった制度をうまく利用して,債権の回収につなげましょう。

 

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