【質問】現在,兄夫婦が父の面倒を見ているのですが,同時に父の財産管理もしている様子です。ただ,父が認知症を患い,寝たきりになってから,兄夫婦が家を建てたり,車を新しくしたりしています。私としては,兄夫婦が父の財産を食い物にしていると思っているのですが,父の資産を守る良い方法はないですか?
【回答】
お父さんの認知症の程度によっては,成年後見人,保佐人または補助人などの選任をすることが考えられます。
【理由】
意思能力という考え方
本来,個人が所有する資産は所有者の自由な意思で処分などができます。
したがって,お父さんが兄夫婦に自由な意思で,家を建ててあげたり,車を買ってあげたりしても,本来は自由です。
しかし,お父さんが財産を処分するかどうか,自分で考えて判断できる能力がない場合,保護を考える必要があります。
そこで,民法では,財産の処分を有効とするには,意思能力が必要とされており,意思能力がない行為は無効となります。
意思能力はおよそ6~7歳程度の弁識能力があるか否かで判断されます。ですので,お父さんの認知症がひどく,判断能力(具体的には医師がテストをし,IQなどで判断します。)がなく,意思能力なしという場合,お父さんが行った行為は無効になります。
成年後見制度
しかし,意思能力の有無は行為を行った時に判断しますので,今仮に意思能力なしとされたとしても,家を買ったり車を買ったりしたときには,意思能力がなかったことを証明できないことがあります。
そこで,民法は判断能力が不足する方の資産保護のため,成年後見人制度などを定めています。
お父さんの認知症がひどく,財産的な判断能力がないとされる場合,家庭裁判所で手続きを行って成年後見人を選任でき,成年後見人が選任されれば,その後のお父さんの資産は成年後見人が全て管理します。成年後見人には親族がなることもありますが,親族間で争いがある場合には,第三者の弁護士や司法書士などが選任されます。
成年後見人が選任されるほどではないにしても判断能力が落ちている場合には,保佐人や補助人といった,限定的な制度もあります。この場合でも,弁護士などが関与することになれば,第三者の目が入りますので,勝手なことはできにくくなります。
本件でも,認知症の程度によりますが,成年後見人などを選任し,第三者に財産を管理させるのが良いでしょう。