債務の支払いや物の処分は慎重に
そのほか,例えば,亡くなったご家族の費用の支払いを請求されたり,家の中にある物などを処分しなければならなかったりすることがありますが,お気持ちとしては急いでやってしまいたいことです。
しかし,場合によっては,その行為を行ってしまうと,相続を承認したものとみなされてしまい,後から相続放棄ができなくなってしまうことがあります。
そこで,今回は,どのようなことは大丈夫で,どのようなことは避けておいた方が良いかお話しします。
遺産の処分はしてはいけない
相続放棄などの可能性がある段階で,遺産である不動産や車両などを売却したり贈与したりすることは,遺産の処分にあたり,相続放棄などができなくなってしまいます。
また,遺産の中にある債権の回収も同様です。
ただ,生命保険金を受取人が受け取ることは,生命保険金は遺産ではなく,受取人の資産ですので,処分にはあたりません(受取人が亡くなった人で,生命保険金を相続の手続きで受け取る場合は別ですので,注意してください。)。
保存行為は許される
遺産の保存をするための行為は処分には当たりませんので許されます(後日相続放棄なども可能です。)。
例えば,冷蔵庫の中の生ものが腐敗したので処分してしまうとか,遺産の不動産がこのままでは倒壊してしまうので,最低限の補修をしておくなどです。
ただ,このときの費用に遺産の預金を利用することは,最終的には遺産から行うことも可能ですが,遺産の預金の利用行為が処分に当たり,相続放棄ができなくなるおそれもありますので,費用は自腹で負担し,後日相続人に請求する方が無難です。
光熱費の自動引き落としが続くことは可能
光熱費などが自動引き落としになっていて,相続後も遺産の預貯金から払い戻されることがありますが,これは,生前に設定されていたものがそのままになっているだけですので,誰かが処分行為をしたわけではなく,問題ありません。
ただ,請求書に対して遺産の預貯金を払い戻して支払ってしまうと,預貯金の処分をしたことになり,後日相続放棄が困難になる可能性もありますので,支払う場合は遺産からではなく,自分の資産から支払いましょう。
遺言を探す
なお,遺言がある場合,遺言どおりに相続するのが原則になり,遺産分割協議を経る必要がなくなる場合が多いです。
そこで,遺産分割協議に入る前に遺言の有無は確認しましょう。