健康保険が使えないわけではない
交通事故の場合,健康保険を利用しない自由診療で診察を受けることが多いですが,健康保険が使えないわけではありません。
一般的には,相手方の任意保険会社が全て支払をすることが多く,自由診療をすすめられることが多いです。
しかし,保険会社が対応しない場合など,どうしても自分が医療費を負担する場合,健康保険を利用することもできます。
ただし,健康保険に交通事故による受傷である旨届け出なければならず,また,健康保険がその支払い分について相手方に直接請求することになりますので,注意は必要です。
労災に該当する場合は健康保険より労災保険
なお,労災に該当する場合に健康保険を利用すると,労災隠しというものに該当してしまいますので,労災に当たる場合には,勤務先にお話しし,労災を利用するようにしましょう。
賠償には3つの基準がある
交通事故の保険には,自賠責と任意保険がありますが,自賠責の基準と任意保険の基準は異なります。
また,裁判で認められる賠償もこれらの基準とは異なります。
つまり,交通事故の賠償には,自賠責基準,任意保険基準,裁判基準(弁護士基準)があります。
自賠責基準はかなり綿密に賠償額が決まっており,基本的には最低基準といえます。
任意保険基準は,保険会社が内部で設けている基準で,法的根拠があるものではありません。ですので,保険限度額を超えない限り,裁判で判決が出るなどすれば,任意保険基準にかかわらず,保険会社は支払ってきます。
裁判基準は,裁判で裁判所が決める際の相場で,事例ごとで異なる部分もあります。
保険会社との交渉の際,保険会社が提示してきた案が納得できず,弁護士をつけると提案が上がることがありますが,これは,裁判基準があることも保険会社が分かっているためです。ただし,交渉段階では,裁判基準まで提案が上がることはありませんので,裁判をすべきか,交渉でまとめるべきかは悩ましいところです。
以上のとおり,交通事故での賠償請求には様々な注意点があります。
ほかにもあるところではありますが,今回はここまでとしたいと思います。