事業をしていて取引相手が代金を支払ってこない場合はもちろん、婚姻費用や養育費を支払ってこない、貸したお金が返ってこない、慰謝料などの賠償金の支払いを約束したのに支払ってこないなど、相手方からの支払いが滞っている場合、相手方に請求することになります。
しかし、請求しても支払ってこないことは多く、どうしてよいものか途方に暮れることもあります。
このような支払いの滞納に対する対応は、方法も一つではなく、相手方や金額などに応じて様々な手段があります。
弁護士による交渉
例えば、こちらと相手方の間に力関係などがあり、こちらが強く出られない場合や、相手方に言いくるめられてしまう場合があります。
このような場合には、弁護士に依頼して、通知を送り、場合によっては弁護士が交渉を行うことが考えられます。
調停・ADR
弁護士を依頼するには費用がかかりますので、費用をできるだけ抑えたいという場合には、調停やADRといった第三者を交えた話し合いを当事者同士で行う方法もあります。
裁判のような強制力はありませんが、第三者が入ることにより、当事者間での話し合いよりも話がまとまりやすいというメリットや、弁護士を依頼するよりも安いというメリットがあります。
ただし、弁護士への依頼のように、こちらの立場にたったアドバイスは得られませんし、状況に応じて他の手段をとるというような柔軟な対応はできないこと、手続き上時間がかかることなどのデメリットもあります。
なお、弁護士を依頼した上でこれらの手続きを行う場合もあります(例えば、弁護士の交渉を行ったがまとまらなかったことからこれらの手続きをとる場合や、法的な観点や証拠の解釈など、専門的知識がないと交渉が難しい場合などの際には、よくあります。)。
裁判
交渉や調停・ADRでも話がまとまらない場合には、裁判を行う方法があります。
この場合には、証拠による証明が厳密に要請されるので、手元にある証拠状況や準備状況などにより、裁判をした方がよいかは変わってきます。
裁判では、和解でまとまることもあり、和解になれば通常、相手方は任意に支払ってきます。
和解がまとまらなければ判決により終局し、後に述べる強制執行による回収を図ることになります。
履行勧告
家庭裁判所の調停で婚姻費用や養育費などの支払いが決まったにもかかわらず、その支払いが滞納している場合、裁判所で手続きをすれば、履行勧告という、裁判所から相手方に直接連絡を取り、支払いを求めることができます。
強制執行
上記の各種手段を尽くしても回収できない場合や、そもそも話し合いでは解決できなそうな場合、裁判などで債務名義という書類を取得した上で、相手方の資産を差し押さえるなど強制執行という手続きを行うことになります。
強制執行は相手方の資産をある程度特定することが必要になるので、相手方の情報がない場合、なかなか難しいというデメリットがありますが、最近の法改正で、一定の資産に関し、債務名義を持っていると、裁判所を通じた調査が可能になる制度ができましたので、このデメリットはある程度改善されました。
債権回収は弁護士に相談を
以上のとおり、支払いを滞納されている場合、さまざまな手段がありますが、どの手段が最善なのか、どの手段であれば支払いを受けられるかについては、自己判断は難しいため、一度弁護士に相談された方がよいと思います。
また、支払いなどの段階に行く前に、友人にお金を貸すときや、相手方と何か合意をするときなど、後日支払いを受けられるように準備をしておく必要があります。ですので、滞納になる前に弁護士に相談をされた方がよいでしょう。