民事訴訟(以下、単に「裁判」といいます。)では、民事訴訟法などの法律によって、手続きの流れなどが決まっています。
ですので、ご自身で裁判を遂行する場合は特に、裁判の際に自由にお話ししてしまうと制止されることもあり得ます。
また、仮に話を裁判官が聞いたとしても、判決などの判断の際の基礎になるかどうかは全く別の話ですので、「裁判官にあの話をしたはずなのに判決で全く触れていないなんて不当だ」とか、「裁判官は話を聞いていたのか」などといった不満が生じてしまうこともあり得ます。
そこで、今回は裁判の仕組みにおいて、裁判官に伝えたいことがある場合、どうすればよいのかについてお話ししたいと思います。
裁判の基礎になるのは、陳述された主張
裁判は、当事者の言い分(主張)とその裏付け(証拠)を当事者が提出し、それを期日において「陳述」することで、裁判の基礎になります(ただし、裏付けが弱いと主張が認められない場合はあります。)。
したがって、事件の経緯や内容について裁判官に伝えたいことについては、実務上は書面で期日前に提出し、期日において「陳述」する必要があります。
「陳述」自体は難しいものではなく、期日前に裁判所に書面を提出し、相手方にも同じ書面が届いていれば、裁判所に「陳述でよろしいですね」などと聞かれますので、「はい」と答えれば「陳述」したことになるものです。
ただ、口頭で主張しようとすると、裁判所で陳述とみなさず、書面を次回までに提出してくださいといわれる場合が多いかと思います(なぜ書面にするかという点に関しては、どのような主張をしたか裁判記録上残しておくという理由と、主張の正確性を確保する理由などがあります。)。
仮にそのような扱いの場合、陳述に至っておらず、いくらいろいろ話したとしても、裁判上は裁判の基礎になりません。
ですので、まず言い分(主張)を聞いてほしい場合には、各期日までに、書面で言い分を記載して提出する必要があります。
裏付けとして証言を提出することがある
また、裏付け(証拠)においても、事件当事者を尋問することによって、裁判官が話を聞き、その聞いた事実を言い分の裏付けにつかうことがあります。
尋問というのは、裁判官や当事者、代理人弁護士が、当事者や証人に質問し、当事者や証人がその記憶に従って答えることで、その質疑応答をもって証拠と扱う手続きです。
尋問においては、当然、直接裁判官に話をする機会ですから、伝えたいことがある場合には絶好の機会になります。
しかし、質疑応答の形で話をしますので、話したい事はあくまで質問に対する回答として話をする必要があります。
また、あくまで裏付けですので、言い分の方も提出しておかないと、裁判の基礎にはなりません。
手続きの件については、その都度話してよい
事件の経緯や内容などについては、以上のとおり、書面で提出し、尋問で回答するということになりますが、手続きの面(どういう風に進めてほしい、和解の話もしたい等)については、期日において自由にお話しして構いません。
訴訟の遂行に関する訴訟指揮については、基本的に裁判官の裁量によるところが多いので、意見としてお話しすれば、それも前提に裁判官が進め方を判断します。
もっとも、大事なことについては、書面で提出してほしいと言われますので、その場合は書面を作って提出しましょう。