裁判で判決を取得した場合や調停で調停成立となり調停調書を取得した場合など、法的な手続きなどよって、相手方の支払義務が確定したとしても、相手方が任意に支払ってくるとは限りません。
相手方が任意に支払ってこない場合、差し押さえなどの強制執行を裁判所に申し立てることになりますが、差し押さえをするには、相手方のどの財産を差し押さえるか、債権者側で指定する必要があります。
しかし、相手方の資産について債権者が知っていることは少なく、その先に進めないことも多くあります。
そこで、近時、民事執行法が改正され、相手方の資産について裁判所を通して調査する手続きが創設されました。
今回は、この手続き(第三者からの情報取得手続)についてお話ししたいと思います。
第三者から得られる情報の種類
まず、第三者から取得できる情報の種類ですが、①不動産に関する情報、②給与(勤務先)に関する情報、⓷預貯金に関する情報、④上場株式,国債等に関する情報の4種類です。
ただし、①不動産に関する情報に関しては、現段階では実施されておらず、令和3年5月16日までに開始予定とのことです。
手続きのために必要なもの
この手続きをするためには、判決など債務名義を取得しているなど債権者の権利が確定していることが必要です。
また、それぞれの種類ごとに必要な要件が異なります。
②給与(勤務先)に関する情報については、債権の種類が養育費などの生活維持に関する債権か人の生命身体に関する損害賠償請求権であること、財産開示手続きを行ってから3年以内であることが要件になっています。
これに対し、⓷預貯金に関する情報などは金銭債権であればよく、財産開示手続を前提とするような要件もありません。
なお、いずれも不奏功要件という、知れている財産などに強制執行をするのでは完全な弁済を受けることができないという要件が必要ですが、そもそも資産調査ができないような状況では、強制執行できる資産がありませんので、この要件はそこまで厳格ではないようです。
手続きの流れ
上記の要件を満たすことを前提に、裁判所に必要書類を添付して申立てをします。
裁判所では、上記の要件を満たすか判断し、要件を満たしていれば、調査対象の第三者に情報を提供するよう通知を出します。
そうすると、第三者はその情報を裁判所に送付し、裁判所はその写しを債権者に送付します。
情報提供後、裁判所は債務者にも通知しますが、強制執行逃れ防止のため、1か月程度たった後に通知を送付するようです。
したがって、債権者としては、情報の提供を受けたら債務者に通知がいかないうちに差し押さえなどの手続きをとる必要があります。
財産開示手続について
上記のとおり、一部の手続きで財産開示手続をとることが前提となっています。
財産開示手続は債務者を裁判所に呼び出して、財産について陳述などをさせる制度ですが、従前は出頭しない場合などの罰則も軽かったことから、あまり実効性がありませんでした。
しかし、近時の改正で、罰則が刑罰に格上げされ、不出頭などの際の罰が重くなり、かつ、告発等も可能になりました。
今後は方法によって、ある程度の実効性が図られるかもしれません。