金銭の問題などいわゆる民事の問題では,法律の前に当事者の合意が優先される場面が多いです。
また,当事者間の意識としても,当事者双方が合意した場合,それぞれの義務は約束どおり履行されると考えるのが一般的ですし,履行されなければ相手方に履行を求めるのが一般的です。
では,当事者が合意してしまえば,どんなものでも履行を強制したり,裁判で解決したりすることができるのでしょうか。
今回はそのような合意の効力についてお話ししたいと思います。
合意に効果がない場合もある
実は法律上,合意に効果がない場合があります。
まずは,強行規定に違反する場合です。つまり,法律には任意規定と強行規定という種類があり,当事者の意思で変更できるのが任意規定,当事者でも変更できないのが強行規定で,強行規定に反する内容の合意は法的に無効になってしまうのです。
例えば,建物所有目的の土地の賃貸では,借地借家法という法律で存続期間が30年となっており,当事者の合意で2年などという短期の契約を行ったとしても,30年になってしまいます。
次に,公序良俗違反(民法90条)の合意は無効になります。
例えば,違法薬物の売買予約等犯罪に関する合意などがこれにあたります。
さらに,当事者に合意を行う能力がない場合も,契約が無効または取り消されてしまう場合があります。
例としては,ひどい認知症の方との契約は無効になる可能性があります。
合意として有効でも強制できないものもある
また,合意としては有効でも,いざ裁判などを行っても強制できないという合意もあります。
例えば,○○のときは連絡するようにするなどといった合意を行った場合,連絡をすることを裁判で強制はできませんが,合意としては有効ですので,違反の場合は慰謝料などが取れることがあります。
合意を強制可能にするための工夫がある
以上のとおり,合意をすれば全ての合意が強制可能で保護が強くなるわけではありませんので,合意をする際はその効果をよく考える必要があります。
また,強制不可能な合意を実質的には可能にする工夫も必要になります(例えば違約金の設定など)。
もっとも,このような判別は弁護士でないと難しいかもしれません。重要な合意を行う場合には,事前に弁護士に相談しましょう。