相続,特に遺産分割の場合,遺産の中に不動産があると,その評価で争いになることがあります。

 例えば,通常は不動産について,固定資産税の書類が手元にあるなどし,ある相続人はその書類に記載のある評価を主張し,他方で別の相続人はもっと評価は高いはずという主張をして争いになるということがあります。

 このような場合,どのように評価額を決めればよいのでしょうか。

 今回はこのような場合での不動産の評価額の決め方についてお話ししたいと思います。

 

不動産の評価方法は概ね3種類ある

 不動産の評価方法は概ね3種類あります。

 固定資産評価額,路線価,市場価格の3種類です。

 固定資産評価額は自治体が固定資産税を賦課するために算定した不動産評価額です。

 路線価は,相続税の申告において不動産を評価するための基準で算定するものです。

 市場価格は,不動産を具体的に売却する場合に,どのくらいの価格で売却できるのかという観点で評価するものです。

 

遺産分割などでは,合意で決めた算定方法が優先する

 不動産の評価の基準については,まず,相続人間で合意ができれば,それが優先します。

 ですので,例えば固定資産評価額で算定することに相続人全員が了解していれば,特に問題なく,固定資産評価額で算定します。

 これは,話し合いによる遺産分割でも,裁判所の調停による遺産分割でも同じです。

 なお,合意というのは,評価方法の合意ですので,遺産分割自体が合意に至っていなくても,評価方法について合意できれば,評価方法については,その方法によることになります。

 

評価方法に争いのある場合は

 評価方法について合意ができない場合,原則としては,市場価格で算定することになります。

 もっとも,市場価格はかなり幅があり,一つの数字にはなりませんので,市場価格がいくらかというのが争いになります。

 この場合,それぞれが不動産業者などに査定を依頼して,それぞれ価格を持ち寄って,いくらと定めるかを話し合うことになります。

 

市場価格での争いはどうやって解決するか

 では,いくら話し合っても解決しない場合,どうすればよいのでしょうか。

 このような場合,遺産分割協議自体が成立しませんので,裁判所の調停に至ることが一般的です。

 そして,裁判所の調停で,市場価格の争いがあると,裁判所の鑑定を行うことになります。

 鑑定とは,裁判所で委嘱する鑑定人により不動産を評価する手続ですが,結構費用がかかります。そして,その費用は鑑定を申し立てる当事者の負担になります。

 鑑定をすると,一定の評価が出てくるため,裁判所はこの評価を前提に調停などを進めることになります。

 しかし,高額な鑑定費用を支払うくらいなら,評価を妥協して合意した方が良い場合もありますので,この場合は,鑑定も視野にいれつつ,価格を話し合いで調整することになります。

 

 

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